内容
太陽系の惑星の一つである地球上の"生命"は、母なる太陽からもたらされる"光"と本質的なかかわり合いを持っている。その一つの局面は、エネルギー源としての光の利用であり、植物・藻類・ラン藻(シアノバクテリア)やある種の細菌の営む光合成、あるいは、より直接的に光エネルギーを利用してプロトン輸送を行うことによりATPを合成するハロバクテリアの営みがこれに相当する。生物は情報源としても太陽の光を多面的に利用していることはよく知られている。例えば、光発芽・光形態形成・光屈性・走光性、あるいは、地表に到達する低密度の光エネルギーを捕集するためのアンテナ色素系の量や質の光制御など、その生命としての営みや光合成の効率が、直接的または間接的に、光によりコントロールされている。
本書は、これらの分野での最近の研究成果のエッセンスをとりまとめたもので、第1章では、光が情報源として利用され、植物体や光合成系が構築されて行く側面を、第2章では、光合成アンテナ色素系による光の捕集と反応中心における電荷分離ならびにバクテリオロドプシンにおける光エネルギー変換を、第3章として、これに続く、酸素発生・電子伝達・プロトン輸送・ATP合成など呼吸系とも共通する反応の仕組み、さらには、光合成の最終過程としての有機物の合成系を取り上げ、第4章では、グローバルな視点から、地球温暖化など地球環境変化の地球生態系への影響や、究極の化学反応と言われる人工的光合成の実現の可能性などについて論じている。