内容
証券市場に関する完全な理論をマスターしようとすれば、連続時間確率過程モデルや測度論、数理経済学、その他修士課程以前には学ぶことのない知識が要求される。したがって、証券市場に関する理論を本気で勉強しようとすれば、大学院生になって何年も勉強するか、それと同じような一念発起の経験が必要になる。しかし、証券価格に関する離散時間モデルだけに焦点を当てれば、高等数学に莫大な労力を費やすことなく入門を果たすことができる。本書はこのような入門編の学習に供することを目的に書かれた。
本書のねらいは、肩肘張ることなく、金融理論を厳密に論ずることである。計算例を多く取り入れており、演習問題を解くことによって、理解度をチェックしたり、補足的な知識を得たりすることができる。
本書は7つの章からなっている。最初の2つの章は1期間モデルにページを割いている。本書における重要な概念のほとんどがここで紹介されている。
それ以降の章では多期間モデルを扱う。第3章では証券市場モデルの基本的要素について述べ、配当過程や二項モデルのような重要な概念を紹介している。第4章はフォワード取引や先物を含む派生商品にページを割いている。第5章では、消費と投資に関する最適化問題に焦点を当てている。
近年、金利派生商品は非常に重要になってきており、第6章ではこれに焦点を当てている。キャップやスワップションといったな派生商品の評価に、離散時間金利モデルがどのように使われているかを説明している。そして最後の第7章では無限標本空間によるいくつかのモデルを概観している。抽象数学のほうに関心のある読者にとっては、この章がもっとも興味をそそるであろう。