コレクション日本歌人選<017> 北原白秋
國生 雅子 著
内容
目次
01 春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕 02 かなしげに春の小鳥も啼き過ぎぬ赤きセエリーを君と鳴らさむ 03 仏蘭西のみやび少女がさしかざす勿忘草の空いろの花 04 はるすぎてうらわかぐさのなやみより もえいづるはなのあかきときめき 05 片恋のわれかな身かなやはらかにネルは着れども物おもへども 06 こころもち黄なる花粉のこぼれたる薄地のセルのなで肩のひと 07 君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ 08 桐の花ことにかはゆき半玉の泣かまほしさにあゆむ雨かな 09 歎けとていまはた目白僧園の夕の鐘もなりいでにけむ 10 病める児はハモニカを吹き夜に入りぬもろこし畑の黄なる月の出 11 吾弟らは鳰のよき巣をかなしむと夕かたまけてさやぎいでつも 12 廃れたる園に踏み入りたんぽぽの白きを踏めば春たけにける 13 我つひに還り来にけり倉下や揺るる水照の影はありつつ 14 かいつぶり橋くぐり来ぬ街堀は夕凪水照けだしはげしき 15 雉子ぐるま雉子は啼かねど日もすがら父母恋し雉子の尾ぐるま 16 垂乳根の母にかしづき麻布やま詣でに来れば童のごと 17 いつまでか貧しき我ぞ三十路経て未だ泣かすかこの生みの親を 18 老いらくの父を思へばおのづから頭ふかく垂れ安き空しなし 19 垂乳根の母父ゆゑに身ひとつの命とたのむ妻を我が離る 20 かなしきは人間のみち牢獄みち馬車の軋みてゆく礫道 21 編笠をすこしかたむけよき君はなほ紅き花に見入るなりけり 22 ふたつなき阿古屋の玉をかき抱きわれ泣きほれて監獄に居たり 23 いと酢き赤き柘榴をひきちぎり日の光る海に投げつけにけり 24 煌々と光りて動く山ひとつ押し傾けて来る力はも 25 飛びあがり宙にためらふ雀の子羽たたきて見居りその揺るる枝を 26 昼ながら幽かに光る蛍一つ孟宗の藪を出でて消えたり 27 行く水の目にとどまらぬ青水沫鶺鴒の尾は触れにたりけり 28 白南風の光葉の野薔薇過ぎにけりかはづのこゑも田にしめりつつ 29 照る月の冷さだかなるあかり戸に眼は凝らしつつ盲ひてゆくなり 30 帰らなむ筑紫母国早や待つと今呼ぶ声の雲にこだます 歌人略伝 略年譜 解説「底の見えない人 北原白秋」(國生雅子) 読書案内 【付録エッセイ】童謡・童心・童子 白秋の詩の本質をなすもの(山本健吉)
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