コレクション日本歌人選<044> 紫式部
植田 恭代 著
内容
目次
01 めぐりあひて見しやそれともわかぬまに雲がくれにし夜半の月かげ 02 鳴きよわる籬の虫もとめがたき秋の別れや悲しかるらむ 03 おぼつかなそれかあらぬかあけぐれの空おぼれする朝顔の花 04 あらし吹く遠山里のもみぢ葉はつゆもとまらむことのかたさよ 05 北へ行く雁のつばさにことづてよ雲の上がき書き絶えずして 06 あひ見むと思ふ心は松浦なる鏡の神や空に見るらむ 07 三尾の海に網引く民のてまもなく立ち居につけて都恋しも 08 知りぬらむ往き来にならす塩津山世に経る道はからきものぞと 09 ここにかく日野の杉むら埋む雪小塩の松に今日やまがへる 10 春なれど白嶺の深雪いやつもり解くべきほどのいつとなきかな 11 みづうみの友よぶ千鳥ことならば八十の湊に声絶えなせそ 12 四方の海に塩焼く海人の心から焼くとはかかるなげきをやつむ 13 紅の涙ぞいとど疎まるる移る心の色に見ゆれば 14 閉ぢたりし上の薄氷解けながらさは絶えねとや山の下水 15 東風に解くるばかりを底みゆる石間の水は絶えば絶えなむ(宣孝) 16 いづかたの雲路と聞かばたづねまし列はなれけん雁がゆくへを 17 雲の上ももの思ふ春は墨染に霞む空さへあはれなるかな 18 亡き人にかごとはかけてわづらふもおのが心の鬼にやはあらぬ 19 見し人の煙となりし夕べより名ぞむつましき塩釜の浦 20 消えぬ間の身をも知る知る朝顔の露とあらそふ世を嘆くかな 21 若竹の生ひゆくすゑを祈るかなこの世を憂しといとふものから 22 数ならぬ心に身をばまかせねど身にしたがふは心なりけり 23 心だにいかなる身にかかなふらむ思ひ知れども思ひ知られず 24 身の憂さは心のうちに慕ひきていま九重ぞ思ひ乱るる 25 閉ぢたりし岩間の氷うち解けば緒絶えの水もかげ見えじやは 26 み吉野は春のけしきに霞めども結ぼほれたる雪の下草 27 憂きことを思ひ乱れて青柳のいと久しくもなりにけるかな(宮の弁) 28 わりなしや人こそ人といはざらめみづから身をや思ひすつべき 29 しのびつる根ぞあらはるるあやめ草いはぬに朽ちてやみぬべければ 30 たへなりや今日は五月の五日とて五つの巻のあへる御法も 31 篝火のかげもさわがぬ池水に幾千代すまむ法の光ぞ 32 かげ見ても憂き我が涙落ちそひてかごとがましき滝の音かな 33 なべて世の憂きに泣かるるあやめ草今日までかかる根はいかがみる 34 女郎花さかりの色をみるからに露のわきける身こそ知らるれ 35 めづらしき光さし添ふ盃はもちながらこそ千世をめぐらめ 36 曇りなく千歳に澄める水の面に宿れる月のかげものどけし 37 いかにいかが数へやるべき八千歳のあまり久しき君が御世をば 38 九重ににほふを見れば桜狩重ねて来たる春のさかりか 39 神代にはありもやしけん山桜今日のかざしに折れるためしは 40 あらためて今日しもものの悲しきは身の憂さやまた様かはりぬる 41 恋ひわびてありふるほどの初雪は消えぬるかとぞ疑はれける(人) 42 暮れぬ間の身をば思はで人の世のあはれを知るぞかつは悲しき 43 亡き人を偲ぶることもいつまでぞ今日のあはれは明日の我が身を(加賀少納言) 歌人略伝 略年譜 解説「紫式部をとりまく人々」(植田恭代) 読書案内 【付録エッセイ】紫式部(抄)(清水好子)
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