内容
昆虫と菌類は様々な関係を持っている。菌類の立場で述べれば、昆虫に感染して殺す。殺さずに体表や腸そして昆虫の体内までも生活空間として利用する。昆虫に餌として栽培される。これらの関係について、生態学的な興味から類似の書が過去にも、この本の編者であるBlackwellにより出版された。昆虫と菌類のそれぞれの関係の事例はそれだけで興味深いが、さらに本書は、生態学的な記述に加え、最近進展している分子系統学的な知見が加わって記述されているところが特徴だといえる。汎世界的に分布する寄主範囲の広い1種だと考えられてきた種が、実は複数種から成ることが判明したり、今まで菌類とは考えられていなかった昆虫の病原体が菌類との類縁性を指摘されたりという実例があげられている。さらに、昆虫の系統とその昆虫に随伴する菌類の系統が合わせて解析され、その進化の道筋が考察されるなど、昆虫と菌類の生物間相互作用の歴史を考えさせてくれる書である。
[原著書名:Insect-Fungal Associations:Ecology and Evolution]