内容
リーマン面の理論において最初の,そして最も重要な到達点は有理型関数の存在定理である。代数幾何学的に代数曲線として扱ってしまえば,最初から沢山の有理(型)関数が与えられるので,この肝心の部分が見えなくなってしまう。本書で結果的に,代数曲線としての記述よりも解析的な閉リーマン面としての立場を優先しているのは,まさにこのためである。現在では層係数コホモロジーを用いてリーマン・ロッホの定理を先に証明し,その系として有理型関数の存在を示すやり方が一般的になっているようだが,ここではより原初的なアプローチをとる。 このようにして,まず非定数有理型関数の存在を示し,それを起点としてリーマン・ロッホの定理,アーベルの定理,ヤコビの逆問題を論じ,自己同型群に関するフルヴィッツの定理や周期写像の単射性を主張するトレリの定理に至る。また,1変数代数関数体,閉リーマン面,非特異射影曲線の「三位一体」も一方の主題である。閉リーマン面の複素射影空間への埋め込みについては,カステルヌオーヴォー理論を含めて詳しく述べた。(序文より抜粋)