ただしさに殺されないために~声なき者への社会論~
御田寺 圭 著
内容
目次
序章「私はごく普通の白人男性で、現在28歳だ」 第1章 ただしい世界 1 文明の衝突 われわれは、それでも風刺画をやめることはない 西欧文明は敗れる。テロのせいではなく、自らの思想によって 「多様性・多文化共生」という名の片務的責務 表現の自由と人権思想の対立 極右を支持する同性愛者 「前提を共有しない者たち」との戦い 2 アルティメット・フェアネス ウイルスが燻し出す対立構造 平穏な社会は永続的な勝者をつくる 究極の公平を求めて反旗を翻す 3 人権のミサイル 東欧からの贈り物 かつては「人権」によってミサイルが放たれた 迫りくる「相対化」の時代 4 両面性テストの時代 コロナ対策に成功したイスラエル 足かせとなった人権思想 反移民国家ハンガリーの「不都合な勝利」 民主主義国家の光と影 5 共鳴するラディカリズム 連鎖していく過激思想 「生きづらさ」の物語化 責任の外部化 物語と人との共鳴から、人と人との共鳴へ 物語の復活を願う人びと 「多様性」の反動 6 リベラリズムの奇形的進化 不寛容なリベラル? 共感性という風穴 「共感できない者」にも与えられるリベラルな恩恵 道徳的優位性ーー人情=人権=正義 傾斜配分の正当化 徳の賊 第2章 差別と生きる私たち 1 キャンセル・カルチャー ? SNSで台頭する人治主義 自由の制限にはあたらない。なぜなら...... 過去の自分がいまの自分を刺す 伝播する疫病 2 NIMBY 彷徨える社会コストの集積地 高級住宅街に「治安を乱す存在」はいらない 平和な国の最後のリスクは人間である 「被害者」ポジションをめぐるパワーゲーム 3 排除アート 路上生活者を追い出すための作品 「排除」のポジティブな言い換え きれいな街が隠蔽するもの ただしく拒絶するやさしい言葉 4 植松聖の置き土産 社会にとって役立つ存在/役立たない存在 「植松理論」とは何か 反論の脆弱性 私たちの社会にはマイルドな「植松理論」が存在する 植松の問いと対峙する日 5 輝く星の物語 共感と称賛があふれるストーリー 私たちに赦しを与えてくれるから 美しい物語が持つ影の表情 発達障害者の親たちに突き付けられる責任 「ふつう」を擬態するように求める社会 「ありのまま」が受容される人と、そうでない人 6 闘争と融和 「冷淡」な駅員かクレーマーか 危ういバランスの上で成立した「川崎バス闘争」 差別ではなく貧しさによって 強者はどこに消えた? 第3章 自由と道徳の神話 1 ルッキズム 見た目で判断されない社会へ 奇妙な違和感ーー加速するルッキズム? ルッキズム反対論は美しい人のためにある ルッキズム批判の果てにあったもの 2 マッチングアプリに絶望する男 「すべての女がサイコパスに見える。もうだれも信じられない」 彼の見た風景 動物化する人間関係 女性だけが解放された 去勢された男たち さらに理性的になり、ただしくなった男たちは、去っていった 3 健やかで不自由な世界 牛肉は地球環境の「敵」だ 嫌われていたヴィーガニズム 健康である義務ーーパンデミックで変わる倫理 「個人の自由」の喪失 4 自由のない国 一国二制度の終焉 「表現の自由」が存在しない国 「民主主義的プロセス」の省略 ファシズムを歓迎するリベラリストたち 5 置き去り死 トイレで生まれ、アパートで消える命 だれにも煩わされない社会を私たちは望んだ 弱者にのみ降りかかる自由の代償 「迷惑人間を撃退!」 彼女もまた「迷惑で不快な他者」だった 6 死神のルーレット 社会に復讐する者 弱者の「弱者」たるゆえん 誰もが見て見ぬふりをする 助けようとする人にさらにリスクを引きわたす 第4章 平等なき社会 1 親ガチャ 「親ガチャ」という言葉が人びとを捉えた バブルを知らない若者たち 人間社会の「ネタバレ」はもう済んだ 努力信仰が死ぬとき 2 子育て支援をめぐる分断 かつて社会が子どもを育てた時代があった パンデミック後の景気対策として 「子どもたちのために」の建前に寄せられる不満の声 恋愛・結婚が贅沢になる時代 国家の存亡の危機 3 能力主義 大学は、あらゆる差別に反対する? どうしても消せない差別 「能力差別」の合理性 ルッキズムを許さない高偏差値の学生たち 女性を競争社会に投入する オリンピックが明らかにした知的エリートたちの想像力の欠如 交わることのない大衆とエリート 4 低賃金カルテル 厚遇される役に立たない仕事 エッセンシャル・ワーカーには感謝が寄せられるが...... だれもやりたくない地味できつい仕事をあえてする人なのだから 低賃金の原因は私たちの偏見にある 5 キラキラと輝く私の人生のために 「欧米ではメジャーでカジュアルな卵子凍結」 先進国のバリキャリ女性のために働く途上国の女性メイドたち 資本主義の忠実なしもべ 人権思想を守るために、不平等な人権をつくる 6 平等の克服 暴力と破壊が、社会を均す 平和な世界によって失われたもの パンデミックは持たざる者たちの希望になりえるか テクノロジーが「恐怖」を克服した 第5章 不可視化された献身 1 子ども部屋おじさん 増え続ける子ども部屋で暮らす中年男性 人間関係を得る資格とは 快適な社会の透明人間 他者を求めることは「加害」なのか 「社会問題」と呼ぶ責任 2 暗い祈り 新たな就職氷河期の予兆 「公平に」見捨てるべきだという声 すべての人が、同じ方向に祈っているわけではない 社会の低迷と閉塞が救いになった人びと みんな当事者の今が「透明化された」人の痛みを知る最後の機会になる 3 きれいなつながり 震災によって、人びとは再び結ばれた つながり過ぎたその先で あなたは、つながるに値する? 「つながり」が格差を拡大する 人間関係という資産ーー分けられない宝 4 搾取者であり、慈善家であり 聖人君子はいない ある金融家の搾取と善行 天才児のための財団ーー貧しき者から富める者への再分配 スポットライトの影にいる者たち 5 共同体のジレンマ 「オンライン・サロン」は悪なのか 無縁化/無援化社会か、搾取的な包摂か 潔癖さを求める現代の呪い それでも私たちは個人主義を選ぶ 6 疎外者たちの行方 アウトサイダーの終焉 「ヤクザ」が消えれば、やくざ者はいなくなるのか? 疎外の果てに現れた者たち お前はどうするつもりや?
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