著者紹介
サミュエル・ベケット(著者):アイルランド出身の劇作家・小説家。1927年、ダブリンのトリニティ・カレッジを首席で卒業。28年にパリ高等師範学校に英語講師として赴任し、ジェイムズ・ジョイスと知り合う。ダブリンやロンドンでの生活を経て、37年の終わりにパリに正式に移住し、マルセル・デュシャンと出会う。ナチス占領下には、英国特殊作戦執行部の一員としてレジスタンス運動に参加。『モロイ』『マロウンは死ぬ』『名づけえぬもの』の小説三部作を手がけるかたわら、52年には『ゴドーを待ちながら』を刊行(53年に初演)。ヌーヴォー・ロマンの先駆者、アンチ・テアトルの旗手として活躍し、69年にノーベル文学賞を受賞。ポストモダンな孤独とブラックユーモアを追究しつづけ、70年代にはポール・オースターとも交流。晩年まで、ミニマル・ミュージックさながらの書法で、ラジオ・テレビドラマなど数多く執筆。
内容
幽玄夢幻の、絵になる「放送劇」。
わかりやすくて明快な21世紀のベケットを、すべて新訳でお届けします。
表題作をはじめ、本邦初訳の「なつかしい曲」、ドゥルーズが『消尽したもの』で分析したテレビドラマ作品など、13篇を一挙収録! 幽玄夢幻の、絵になる「放送劇」。
喜劇王バスター・キートンの主演により実写化され、誰にも見られたくない男を観客に見せつづける映画(「フィルム」)。宇宙開発競争の時代に突入した世の中から取り残されつつある老人二人の記憶を、車の轟音や手回しオルガンの響きとともに浮かび上がらせる、ロベール・パンジェ作「クランクハンドル」の翻案(「なつかしい曲」)。正方形の辺と対角線上を人間がまるでロボットかサイボーグのようにせかせか歩き回るテレビドラマ(「クワッド」)……。
収録順は、映画:「フィルム」、ラジオ:「オール・ザット・フォール」「燃えかす」「なつかしい曲」「ことばと音楽」「カスカンド」「ラジオのためのスケッチ1」「ラジオのためのスケッチ2」、テレビ:「ねえジョー」「ゴースト・トリオ」「……ただ雲が……」「クワッド」「夜と夢」。巻末に各作品の解説付き。