著者紹介
クリストファー・クラーク(著者):(Christopher Clark)1960年オーストラリア生まれ。ケンブリッジ大学教授。近現代史研究をリードする歴史家の一人。著書に『夢遊病者たち』(全2巻、小原淳訳、みすず書房、2017年)、Iron kingdom: the rise and downfall of Prussia, 1600-1947, Cambridge: Belknap Press of Harvard University Press 2006, Kaiser Wilhelm II, Harlow, New York: Longman 2000などがある。
小原淳(翻訳):1975年生まれ。ドイツ近現代史専攻。現在、早稲田大学文学学術院教授。著書に『フォルクと帝国創設』(彩流社、2011)、訳書にR・ゲルヴァルト『史上最大の革命』(共訳、みすず書房、2020)、R・ゲルヴァルト『敗北者たち』(みすず書房、2019)、R・エヴァンズ『力の追求』(全2巻、共訳、白水社、2018)、Ch・クラーク『夢遊病者たち』(全2巻、みすず書房、2017)、J・スパーパー『マルクス』(全2巻、白水社、2015)、J・スタインバーグ『ビスマルク』(全2巻、白水社、2013)などがある。
齋藤敬之(翻訳):1984年生まれ。ドイツ近世史専攻。現在、南山大学外国語学部講師。論文に「暴力の歴史の描写を目指して――中近世ドイツ犯罪史研究における動向から」(『史学雑誌』第130編第2号、2021)、「近世都市ライプツィヒにおける治安維持人員の行動とそれに対する認識」(『史観』第180冊、2019)などがある。
前川陽祐(翻訳):1978年生まれ。ドイツ近現代史専攻。現在、早稲田大学他非常勤講師。訳書にR・ゲルヴァルト『史上最大の革命』(共訳、みすず書房、2020)、R・エヴァンズ『力の追求』(全2巻、共訳、白水社、2018)、論文に「『パリ講和締結後の世界政治の勢力配分』からみるオットー・ヘッチュの国際政治論とロシア論」(大内宏一編『ヨーロッパ史のなかの思想』彩流社、2016)などがある。
内容
政治権力は歴史性をいかにして作り上げるのか。三十年戦争から第三帝国まで、ドイツを支配した四人の権力者から、国家・時間・歴史の関係をみる。
時間は歴史をつくるが、それは直線的に進むのではなく、その時々の政治体制を正当化し、敵対勢力の力を弱め、権力を維持するのに必須のものであった。
大選帝侯フリードリヒ・ヴィルヘルムは、未来を志向することで、旧勢力と対抗した。フリードリヒ二世は、国家は時代を超越するとして、強大な国家を維持した。ビスマルクは、歴史の偶然性を重視し、政治的決定を際立たせた。ヒトラーは、徹底して歴史を拒絶した。ヴァイマル期との切断を強調し、遠い過去と遠い未来を直結させるという、特異なナチの時間において、国家はもはや歴史の立役者ではなかった。
時間と権力の抜き差しならない関係を明らかにし、危機に揺れる今日の政治と歴史を架橋する一書。