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ヨーロッパ文学とラテン中世 新装版
E・R・クルツィウス
著
南大路振一,
岸本通夫,
中村善也
翻訳
発行年月 |
2022年04月 |
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言語 |
日本語 |
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媒体 |
冊子 |
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ページ数/巻数 |
12p,927p |
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大きさ |
22cm |
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ジャンル |
和書/人文科学/文学/文学史 |
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ISBN |
9784622091004 |
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商品コード |
1034457562 |
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NDC分類 |
902 |
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本の性格 |
学術書 |
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新刊案内掲載月 |
2022年05月4週 |
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商品URL
| https://kw.maruzen.co.jp/ims/itemDetail.html?itmCd=1034457562 |
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著者紹介
E・R・クルツィウス(著者):(Ernst Robert Curtius)
1886-1956。ドイツの文学・文明批評家にして、ロマン語文学研究の権威。彼は、「ドイツ的なもの」と「フランス的なもの」が互いに対立しながら錯綜し、互いに牽引しながら反撥する土地エルザスに育った。この環境は若い彼に、引裂かれたドイツとフランスという二つの民族精神を結びつけるという切実な問題を課した。これは後日、「ヨーロッパとはたんに地理的名称をいうのではなく、固有の伝統を有するひとつの〈意味統一体〉である」ことを見事に証明した記念碑的大著「ヨーロッパ文学とラテン中世」となって結実する。本書はまた、文献学のあざやかな駆使により、中世像を新しく画定した。著書はこの他に、「あたらしいフランスの文学の開拓者たち」1919、「バルザック論」1923、「フランス文化論」1930、「危機に立つドイツ精神」1932、「ヨーロッパ文学評論集」1950などがある。
南大路振一(翻訳):(みなみおおじ・しんいち)
1923年京都市に生れる。1951年京都大学文学部卒業、ドイツ文学専攻。大阪市立大学名誉教授。2017年歿。
岸本通夫(翻訳):(きしもと・みちお)
1918年福岡県に生れる。1941年東京大学文学部卒業、言語学専攻。1991年歿。
中村善也(翻訳):(なかむら・ぜんや)
1925年福井県に生れる。1949年京都大学文学部卒業。西洋古典文学専攻。1985年歿。
内容
これは、ヨーロッパ文学について今世紀に書かれたおそらく最も重要な書物であり、今後、ヨーロッパ文学または文化を語るとき、つねに念頭におかるべき書物である。
ヨーロッパとはたんに地理的名称をいうのではなく、固有の伝統を有するひとつの「意味統一体」である。クルツィウスは歴史研究の根底をなすひとつの学問的技術たる文献学を駆使することにより、この事実を見事に証明する。西洋文化のもつ空間的時間的統一性をあらたな方法によって照らし出す試みにおいて、ひとつの立脚点となるのは、ウェルギリウスとダンテのあいだに横たわる十三の世紀の教養語たる「ラテン語の世界」である。もうひとつはギリシア、ローマから十六、七世紀に至るあいだの諸文学、すなわちヨーロッパ文学である。かかる楕円構造よりなる広大な文学空間を、著者は細心に精査しつつ、各テキストのなかに文学的伝統の連続性を探りあてる。
「文学」という言葉の出自、「古典的著作家」の概念の歴史、「マニリスムス」と定義される反古典主義的諸潮流、そして「トポス論」などの諸テーマについて、歴史的な詳述がなされ、読者はおのずとヨーロッパ文学の全体考察へと導かれる。
「文学の現象学」を志向する厳密な方法論にもとづきながら、これはまたその背後に現代西洋文化にたいする危機意識をもった文明批判の書物である。ナチの神話と暴力による「尺度と価値」の崩壊、それにひきつづく不毛な「荒地」としての現代的情況。これに対抗して、本書は遠く中世を根拠地にとりながら、あらたな人文主義の旗のもとに知的迂回戦を展開している。デラシネの時代にあって、文学的伝統の根元を歴史的に証明した本書が、ゲーテ賞を得たことはきわめて当然のことといえよう。