内容
グレート・ウェーブは一日にしてならず。巨大な波が小舟の上にくずれかかる寸前の一瞬をとらえた北斎の「神奈川沖浪裏」。グレート・ウェーブの愛称で世界的に知られているこの錦絵は、さながら日本のアイコンとなった観があります。このエネルギーに満ちた傑作を描いたとき、北斎はすでに70歳を迎えようとしていました。浮世絵に風景画というジャンルを確立させた北斎が、その高みまでいたった道筋を豊富な画像とともにたどります。
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目次
風景画家としての北斎を考える
①
画業早期の作品に見る風景表現――春朗・宗理期
春朗期の黄表紙と浮絵/宗理期の摺物と狂歌絵本
②
北斎期の多彩な作品にみる風景表現
人気絵師として活躍/狂歌絵本の傑作/東海道を描く揃物/洋風風景画/門人たちの洋風表現
③
絵手本と画譜に見る風景表現
『北斎漫画』/三つわりの法/風景画集としての『北斎漫画』七編/『今様櫛きん雛形』/『冨嶽八体』/打ち続く身内の不幸
④
《冨嶽三十六景》の流行―浮世絵風景画の確立
新しい青色絵の具、ベロ藍/藍摺り《冨嶽三十六景》のヒット/岷雪の『百富士』/南蘋派の影響/《冨嶽三十六景》成立の順序/《冨嶽三十六景》の市場へのインパクト/風景画で実証したベロ藍の力
⑤
《冨嶽三十六景》以後の画壇と北斎
北斎にならう他派の絵師たち/北斎の天保期の名所絵揃物/『富嶽百景』/広重の台頭/晩年の風景表現