内容
江戸時代の商人は「陰徳」を積むという考えから当時すでに相当な水準で社会貢献活動を行っていた。現代の企業によるフィランソロピー(慈善・篤志活動)の先駆的な姿である。また「何を民間が行い、何を国家に任せるか」は、明治維新期に独立という観点から福沢諭吉が提起して以来の古くて新しい重要な問題でもある。このような社会貢献における思想的背景と理論経済学からみた国家や市場の機能と限界を問いながら社会貢献の在り方と本質について考える。NPOや個人によるボランティア、企業フィランソロピーといった民間非営利セクターによる日常におけるさまざまな社会貢献活動や災害時における復興支援などは、価値観の多様化した現代の成熟社会では、ますますその重要性が高まってきているといえる。本書では、社会の仕組みを市場システム(自助)、政治システム(公助)、狭義の社会システム(共助)と捉えて、さまざまな社会的課題に対してどのようなシステムが望ましいかを比較・考察するため、民間非営利セクターの現状ならびにその社会的役割と意義について経済学的観点から論究する。