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被差別部落女性の主体性形成に関する研究

熊本 理抄  著

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価格 \5,500(税込)         

発行年月 2020年04月
出版社/提供元
言語 日本語
媒体 冊子
ページ数/巻数 466p
大きさ 22cm
ジャンル 和書/社会科学/社会学/社会組織・社会集団
ISBN 9784759201222
商品コード 1031651296
NDC分類 361.86
基本件名 部落問題
本の性格 学術書
新刊案内掲載月 2020年06月1週
商品URL
参照
https://kw.maruzen.co.jp/ims/itemDetail.html?itmCd=1031651296

著者紹介

熊本 理抄(著者):1972年福岡県生まれ。近畿大学人権問題研究所教員。博士(人間科学)。
留学先で先住民族や性的少数者の人権運動に出会ったことをきっかけに、大学卒業後、反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)事務局に専従職員としてかかわる。同会事務局長を経て、2002年より現職。
共著に、『講座 人権論の再定位 第4巻 人権の実現』(法律文化社、2011年)、『現代の「女人禁制」ー性差別の根源を探る』(解放出版社、2011年)、『沈黙する人権』(法律文化社、2012年)、『家族写真をめぐる私たちの歴史ー在日朝鮮人、被差別部落、アイヌ、沖縄、外国人女性』(御茶の水書房、2016年)ほか。

内容

 本書は、日本の被差別部落女性の主体性形成に焦点をあて、その形成過程を明らかにするなかで、部落女性が直面する諸問題を考察し、部落女性による運動の今後の課題と展望を提示する。部落女性の主体性はいかなる過程をたどって形成されるのか。部落女性の主体性形成に部落差別からの解放をめざす組織はどのような支援体制を採ったのか。部落女性はそうした体制のなかでどのように主体性形成を追究したのか。「複合差別」概念は主体性形成追究に有用か。これらの問いに答えを出すことが本書の目的である。
 部落差別撤廃を最優先課題として設定した差別のとらえ方と政策対応では、その集団内における他の差別抑圧に関心を払わないという矛盾をきたす。そのため部落女性の状況を考察するにあたっては、従来部落解放運動で使われてきた差別論には限界があり、これまでの差別論を再考する必要がある。なぜならば部落女性は、被差別部落民であり、女性であり、多くが不就学低学歴であり、低賃金不安定非熟練労働者である、といったいずれも逃れがたい条件の絡み合いのなかで生きているからである。
 部落女性の存在や声はこれまで、「同じ部落民」あるいは「同じ女性」とひとくくりにされるか、「部落差別の対象」あるいは「女性差別の対象」という一元的カテゴリーに押し込められ、優先順位がつけられるかで、不可視化あるいは序列化されてきた。「部落差別が解決すれば部落コミュニティのなかの女性差別も解決する」という部落解放運動と、「女性の地位が向上すればマイノリティ女性の地位も向上する」という女性解放運動のいずれもが、部落女性の課題を取り扱ってはこなかった。
 部落女性の経験を明らかにするためには、部落差別を受けさらに女性差別を受けるといった「加算的」(additive)分析では、差別相互の関係性、それらを生み出す構造を理解できないばかりか、ある人たちの経験を固定化し、それに「さらなる」差別を受けていると「加算」することは、「異なる」経験を見えなくする。部落差別や性差別を固定的なものとしてとらえてしまいかねず、差別に序列化を持ちこむ問題もはらんでいる。差別のとらえ方のみならず、主体性論の視点からも「加算的」分析には課題が多い。男性を部落解放の「主体」とする部落解放運動、部落女性を不在とするフェミニズムを足せば、部落女性は解放されるという問題ではない。
 本書は、ブラック・フェミニズムとクリティカル・レイス・フェミニズムの知見に学びながら、部落女性の闘いに導入された「複合差別」という日本語概念を再考し、部落解放運動が展開してきた差別認識と解放理論を問い直す。それは主体性論の問い直しを求めるものである。なぜならば、いくつもの条件の絡み合いのなかに逃れがたく位置づけられている部落女性は、部落男性とは異なる解放のありようを展望しているはずだからだ。本書は部落女性の語りから、部落解放運動が展開してきた差別論と主体性論を問い直し、その再構築への足がかりとすることをめざすものである。

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