内容
司法専門職ではない裁判員が重大事件を裁判官とともに審議・判断する裁判員裁判制度が平成21(2009)年に始まり,「なぜ彼/彼女は罪を犯したのか」という根本を問うことの重要性はかつてなく高まりつつある。裁判を受ける被告人の心理や犯行メカニズムを見定める手法「犯罪心理鑑定」は情状鑑定とも呼ばれ,専門家=鑑定人の法廷証言において,被告人のパーソナリティ,家庭環境,成育史を調査し,犯罪との関係を解説するだけでなく,被告人の更生の可能性やその方法について見解を述べ,裁判員が被告人の全体像をとらえた判断を下すための条件を整えていく。第1部「技術としての心理鑑定」,第2部「情状鑑定としての心理鑑定」,第3部「心理鑑定の臨床的意義」,第4部「心理鑑定の今後の展望」から構成される本書では,方法としての犯罪心理鑑定を,精神鑑定との対比や司法領域におけるポジションから幅広く論じる。さらに少年事件,非行,発達障害,いじめ,虐待の犯罪心理鑑定ケーススタディ,被告人の変容と更生を目指す臨床面接,民事事件における意義,供述分析鑑定を取り上げ,未だ十分に彫琢されていない犯罪心理鑑定の基礎構造の確立を目指す。心理鑑定専門家たちの経験を結集して実務に資する高い技術を育むための「犯罪心理鑑定マニュアル」。