内容
きみが絶対に手出しのできないぼくの心のなかの声を聞いてぼくはきみと一緒にいることに決めたのだ。それは「それぞれのではない孤絶」だともぼくは云ったことがある。手紙の最後に「そのままで」と書いて立ち去ったきみの上にはほんとうに何もなかった。それはきっと、とても昔の光景。きみが諭した跡だったろう
(「〈孤絶‐角〉」)
「群も雑も陰も塹も、……これから岸田が掘って行くだろう詩の音だ、……。ゼリー……ゼリー……は、岸田が敲く恋の遺灰だ」(吉増剛造)
張りつめた息づかいで一行を刻む繊細強靭な詩魂。高見順賞受賞の『〈孤絶‐角〉』など4詩集を収録し、ゼロ年代を切り開いた詩人の進行形の姿を伝える。
解説=吉田文憲、瀬尾育生、藤原安紀子、中里勇太、菊井崇史