日本語の歴史<6> 主格助詞「ガ」の千年紀
柳田 征司 著
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内容
目次
はじめに 一 文法史研究上の中心課題 文法研究の中心課題は構文法である 数詞から連体副名詞へ 代名詞 代名詞の機能 品詞論から構文論へ 古代語の文法と近代語の文法 係り結びの衰退 二 係り結び衰退の原因を解く突破口 係助詞の範囲と種類 一般に説かれる係り結び衰退の原因―連体形終止 裸の已然形の孤立 北原保雄氏の着眼―文中の「カ」「ヤ」の文末への移行 現代共通語の疑問表現 『天草版伊曽保物語』の疑問表現 『竹取物語』の疑問表現 平安初中期の疑問表現と室町末期の疑問表現 三 文中の「ヤ」による疑問表現と文末の「カ」による疑問表現 文中の「ヤ」と文末の「カ」の使い分け 倒置して現代語訳できる例 倒置して現代語訳できない例 文末の「カ」は直前の事柄を疑問の対象としている 『万葉集』の疑問表現 『万葉集』における文中の「カ」と文末の「カ」―要判定の疑問表現 「妹か待つらむ」と「妹待つらむか」 新情報と旧情報/疑問の範囲と疑問の焦点 「今日か越ゆらむ」〈新情報―新情報〉 「夫かあるらむ」〈新情報―新情報〉 「~にかある」 「波か立たむ」と「波立てや」 文中の「カ」と文中の「ヤ」 『竹取物語』の「子安の貝取りたるか」〈旧情報―新情報〉 と「龍の頸の玉や取りておはしたる」〈新情報―旧情報〉 「『大伴の大納言の人や……取れる』とや聞く」 「『光やある』と見るに」〈新情報―新情報〉 後の時代の例 疑問の範囲と疑問の焦点(定義) 古代語の疑問表現と近代語の疑問表現 四 文中の「ヤ」(要判定)「カ」(要説明)による疑問表現の衰退 文中の「ヤ」による疑問表現の衰退―要判定の疑問表現の場合 係助詞と主格助詞「ガ」との相克 文中の「カ」による疑問表現の衰退―要説明の疑問表現 沖縄方言の疑問表現 文中の「ヤ」による疑問表現(すなわち係り結び)衰退後の疑問表現 五 うなぎ文はどこから来たか 疑問表現とうなぎ文 「秋山我は」(『万葉集』) 要選択の疑問表現甲形式における問いと答え 「秋山我は」に対する問いと答え 『源氏物語』(薄雲の巻)の春秋優劣論の問いと答え 要選択の疑問表現乙形式における問いと答え 「秋山我は」に対する問いの表現 要判定の疑問表現における問いと答え 要説明の疑問表現における問いと答え 「春は曙」(『枕草子』) 二重格表現 古代日本語にうなぎ文は存在しなかった うなぎ文の成立が想定され得るもう一つの経路 外国語のうなぎ文 格助詞の無形とうなぎ文 六 係助詞「ゾ」「ナム」の衰退 主格助詞との相克 沖縄方言の「du」「ru」 主格助詞「ガ」は係助詞を衰退させるほどの影響力を持ったか 七 係り結びの起源 「カ」「ヤ」「ゾ」「ナム」の係り結びの起源―倒置説― 倒置説は妥当でない―〈新情報―新情報〉の場合― 倒置説は妥当でない―〈新情報―旧情報〉の場合― 倒置説は妥当でない―「ゾ」の場合― 「カ」「ヤ」「ゾ」「ナム」の係り結びの起源―注釈(的先行述語)説― 注釈説は妥当でない 「カ」「ヤ」「ゾ」「ナム」とその結び―補足説― 連体形終止文の三種 文中の「カ」による疑問表現形式の成立過程 〈コソ―已然形〉の形成 古くは〈コソ―已然形〉でなかったことの名残り 係り結びにおける結びの意味 八 「コソ」と「ハ」「モ」と副助詞の場合 生きのびた係助詞 「コソ」の生きのび方 「ハ」「モ」が生きのびたわけ 主格助詞「ガ」確立以前と以後の「ハ」 「ヲバ」と「ハ」/沖縄方言の「ガハ」「ガモ」 副助詞の場合 連用成分の構造 準体助詞と副助詞 係助詞 情意的表現から論理的表現へ 九 主格助詞「ガ」の確立 日本語文法史上に起きた最も重大な出来事 主格助詞「ガ」の確立 連体修飾節中の主格表示 〈体言ガ・ノ+動詞句+ゴトク〉と〈見ガ欲シ〉 連用修飾節中に現れる主格助詞「ガ」「ノ」1 連体形終止文に現れる主格助詞「ガ」「ノ」 形容文において主格助詞が確立するもう一つの文脈―サ語法― 連用修飾節中に現れる主格助詞「ガ」「ノ」2 主格助詞「ガ」「ノ」に対して終止形で終わるように見える文 右の問題について考え残していること 後世、「ガ」が主格助詞に、「ノ」が連体格助詞 に用いられるようになるのはなぜなのか 名詞文の「ガ」 対象格「ガ」の出自 「……マクホシ」 「私は母が恋しい」「私は鐘が聞こえる」 「……マクホシ」から「……マホシ」へ 「タシ」がとる格助詞 「ヲ……タシ」から「ガ・ノ……タシ」へ 主格助詞「ガ」の語順 主格助詞「ガ」の使用が遅れる文 喚体文の衰退 おわりに あとがき
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