内容
文書はどのように作成・保管されたのか。律令国家を動かした文書行政の実態や、正倉院文書の作成から保管に至る史料群の形成過程、さらに中国・敦煌文書との比較から、日本の文書行政の特質を解明。
【内容説明】
1)正倉院文書を検討し、文書行政の実態を解き明かす
律令国家の根幹を支えた文書行政はどのように運営されていたのか。役所間でやり取りされる正倉院文書をてがかりに、奈良時代の文書行政の実態を具体的に解き明かす。
2)文書・帳簿の作成から保管まで、史料群の形成過程を検討
正倉院文書中の「石山寺造営関係史料」を手掛かりに、文書・帳簿の作成から保管までの一連を考察。署名・案件ごとに分類され、継文・帳簿類として保管されたこと、上級官司である造東大寺司に提出されるものと提出せずに保管されるものがあったことなど、正倉院文書が史料群として形成される過程を明らかにする。
3)日中の文書管理システムの特質とは
正倉院文書と唐の敦煌・吐魯番(トルファン)文書に残る案巻とを比較・検討し、日中の文書行政システムの特質を明らかにする。中国では、文書の到来から返信まで一つの帳簿で一括管理されていたのに対し、日本では、帳簿の処理・保管・廃棄は実務担当者の判断にゆだねられており、こうした状況下で形成されたのが今日伝存する正倉院文書だったとする。
4)正倉院文書「続々修」の整理過程と全容
複数の目録を頼りに、明治10年代に行われた整理過程を検討。現行の続々修を、写真版での確認や各種の目録と突き合わせることで、復原の最小単位である「断簡」を提示。続々修と未修古文書目録、また大日本古文書の掲載頁を一覧で表示(全124頁)。
5)写真版から古代史料を復原する方法を提示
『西宮記』や「唐令」などの基本的な古代史料について、写真版(影印版)を素材に史料復原の具体的な成果とその方法論を提示。書下ろしコラム3本も収録。