内容
平安時代後期の公卿、源俊房(1035~1121)の日記。他に記録の少ない、摂関期から院政期への移行期を記述の対象としており、また、藤原氏の日記ではあまりみられない記事(薬師寺最勝会関係など)を有するなど、公卿にまで上りつめた源氏の日記としても貴重である。 現存諸本で最も注目されるのが俊房自筆本八巻で、具注暦に記された暦記七巻と、別記一巻からなる。そのうち暦記二巻が尊経閣文庫の所蔵(他の六巻は宮内庁書陵部所蔵)で、現存する公卿の自筆暦記としては、藤原道長の『御堂関白記』についで古い。暦記は、記載スペースが限られることから、一日に書くべきことが多く存するとき、記述を紙背に続ける(裏書)、あるいは切断して別紙を挟み込む(継入紙)といった工夫がなされるが、『水左記』自筆暦記では継入紙はほとんどみられず、夥しい数の裏書が存する点が特徴といえよう。他に古写本は少なく、抄出本とはいえ、本冊所収の三条西家旧蔵本(室町期写)も重要な位置を占め、自筆暦記とこの抄出本とで、現存記事の大半を占める。