内容
アリストテレスの著作のうち「オルガノン」と呼ばれる方法論に関する著作群に含まれる『分析論後書』は,これまで『分析論前書』で定式化された三段論法による推論の身近な事例への単純な応用の書として位置付けられてきた。本書は,そのように位置づけられ,論証構造の分析や個別科学の理論体系の性格付けの問題,錯綜した叙述スタイルといった,これまで知られてきた『後書』の側面に,『形而上学』をはじめアリストテレスの著作を貫いている実体論の視座を与えることで,個々の事象の経験的な記述を本質論的に捉えなおそうとする「論証」の考え方に込められた,アリストテレス独自の本質論的方法論を探り出し,またその錯綜した叙述にもアリストテレスの思考のプロセスを読み取ろうと試みる。そして,その方法論的思考がそれ自体,哲学としての意味を担い得る「方法としての哲学」というアリストテレス哲学の核心を浮彫にする。