著者紹介
エーリカ・マン(著者):Erika Mann, 1905–1969
女優、作家、ジャーナリスト。ドイツの作家トーマス・マンとカーチァ夫人の長女として、一九〇五年に生まれる。演劇を志し、演出家マックス・ラインハルトに師事、俳優として活動する。一九三三年にカバレット「胡椒挽き座」を立ち上げ、ナチス風刺を主とした公演活動でヨーロッパ各地を巡業した。ヒトラーの政権掌握後はスイスに亡命、のちアメリカに移住し、父トーマスや弟クラウスらとともに、主に講演や執筆活動を通して反ナチスの立場を鮮明にする。第二次大戦中はロンドンを拠点にジャーナリストとして活動した。大戦後にはニュルンベルク裁判を傍聴、報道している。一九五二年に両親とともにアメリカを離れ、スイスに移住。一九六九年、チューリヒにて死去。著書にナチズム下の学校を批判した『野蛮人の学校』(一九三八)や『トーマス・マンの晩年』(一九五六)などがある。
クラウス・マン(著者):Klaus Mann, 1906–1949
小説家、評論家、雑誌編集者。トーマス・マンとカーチァ夫人の長男として、一九〇六年に生まれる。十代後半から短編小説を執筆、劇評もものした。創作と並行して姉エーリカとともに演劇活動を行い、「胡椒挽き座」にも参加。ナチスの権力掌握後は国外へ脱出、オランダで文芸誌『ザムルング(結集)』を編集し、亡命ドイツ作家たちに作品発表の場を提供するとともに、英米仏ほか諸国の作家たちの作品を掲載した。のちアメリカに移住、亡命ドイツ知識人と連帯するとともに、ドイツ国内に留まった知識人とも交渉を保ちながら、反ナチスの論陣をはった。アメリカ市民権を取得、第二次大戦ではアメリカ軍兵士として従軍している。一九四九年にカンヌで自ら命を絶った。代表作に『悲愴交響曲』(一九三五)や『メフィスト─ある出世物語』(一九三六)などがある。
前川 玲子(翻訳):立教大学文学部卒業、米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学院(アメリカ研究科)博士課程修了(Ph.D 取得)。
2017年まで京都大学大学院人間・環境学研究科教授を務め、同年定年退職。京都大学名誉教授。
専門はアメリカ思想史。特に1920年代~50年代のニューヨーク知識人、亡命知識人について研究。
著書に『アメリカ知識人とラディカル・ビジョンの崩壊』(京都大学学術出版会,2003)、『亡命知識人たちのアメリカ』(世界思想社,2014)、また編著書にCrossing Cultural Boundaries in East Asia and Beyond (Brill, 2021)などがある。