内容
英国植民地支配で生まれた自由なビジネス空間は、中国返還後50年間の「高度な自治」の約束のもと、自律をのぞむ「香港人」を育んできた。しかし近年、あからさまな暴力や司法を超えた法が、つぎつぎと言論や参加を抑えつけている。抗議や抵抗が激しさを増すと同時に、分断と格差もよりあらわになっていく――香港のさまざまな立ち位置にいる人たちは、未来をどう展望しているのだろう。主婦、ソーシャルワーカー、非常勤警察署員、大学院生、香港っ子日本人高校生、親中派年金生活者。中国で農村フィールドワークや人権派弁護士の支援を重ねてきた著者は、香港で暮らした日々を振り返り、旧友や師と再会した。暴力を、沈黙を、抵抗をどう思っているのか? 「敵」は誰なのか? 経済、政治、人的交流のエネルギーのせめぎあう東アジアで、台湾や日本の現在と重ね、問いの共有と対話を模索する、やわらかで熱い知性の省察。