内容
戦後日本を代表する政治学者・丸山眞男の『日本政治思想史研究』(東京大学出版会)にならぶ主著であり、「戦後日本社会科学の精神的起点の一つ」(道場親信)と評され、多くの人びとに影響を与えました。三部に分けられ20本の論文が収録されています。各論文は、講演調、書簡体、対話体と、ヴァラエティにとんだ歯切れのよい文体でつづられており大変読みやすく、また著者自身による詳細な「追記および補註」も読者の理解を助けてくれます。第一部には「日本ファシズム」をめぐる論考がおさめられ、特に「超国家主義の論理と心理」の与えたインパクトは大きく、その後の天皇制分析の出発点となり、「軍国支配者の精神形態」では「無責任の体系」というキーワードで日本の支配機構を分析、戦争責任問題の分析への道をひらきました。第二部ではファシズムと同時に共産主義の問題も論じられています。第三部では政治学の基本的な概念を整理した文章がならんでおり、著者自身の時代状況への対応も見ることができます。「現代における人間と政治」では、『独裁者』などチャップリンの映画からときおこし、知識人の役割についての考察を深めています。発表より半世紀経った現在にいたるまで繰り返し読まれ、言及、参照され、論じられる、戦後最深・最長のロングセラーです。
目次
第一部 現代日本政治の精神状況
一 超国家主義の論理と心理
二 日本ファシズムの思想と運動
三 軍国支配者の精神形態
四 ある自由主義者への手紙
五 日本におけるナショナリズム
六 「現実」主義の陥穽
七 戦前における日本の右翼運動
第二部 イデオロギーの政治学
一 西欧文化と共産主義の対決
二 ラスキのロシア革命観とその推移
三 ファシズムの諸問題
四 ナショナリズム・軍国主義・ファシズム
五 「スターリン批判」における政治の論理
第三部 「政治なるもの」とその限界
一 科学としての政治学
二 人間と政治
三 肉体文学から肉体政治まで
四 権力と道徳
五 支配と服従
六 政治権力の諸問題
七 現代における態度決定
八 現代における人間と政治
追記および補註
旧版への後記
増補版への後記