内容
バブル崩壊以降四半世紀に亘り、不況下で大きな変動を経験した日本経済も、いよいよ軌道に乗り始めたかに見えます。長期的には、前例のない人口減少は経済成長にとって大きな障壁となって立ちはだかっています。巨額の政府債務が放置された場合に、今のところ国債の大量保有に満足しているかに見える投資家にどのような悪影響を与えるか、まだ明らかではありません。企業は、最先端の技術や良好な労使関係のようなメリットを享受する一方で、低い利益率や起業家精神の衰退がアキレス腱として危惧されています。日本企業と労働市場は長く、系列、株式持ち合い、終身雇用制のような日本独自の慣行によって知られてきましたが、現在これらの慣行は大きな岐路に立たされています。正規雇用と非正規雇用の分断のような労働市場の新しい二重構造が現在の日本に拡大しています。
本書は、日本経済の現在、その構造や特徴の変化、その課題を分析し、現在の日本経済を概観します。最大の特徴は、日本経済の経験や慣行と他の先進国経済との相違に繰り返し立ち返っている点です。日本経済と他の先進国経済の相違を強調することにより、本書は類書にない国際的な視点を前面に打ち出すことに成功しています。標準的な経済学の理論に基づき議論は展開されていますが、経済学のトレーニングを受けていなくても理解できるよう、平易に記述されています。日々経済ニュースに接していれば、テクニカルな分析に躓くことなく、本書のエッセンスを容易に理解することができるでしょう。