内容
学部3年次程度の代数学の講義のうち環論の知識を仮定して,代数曲線について初歩から解説し,因子と線形系による代数曲線の射影空間への埋め込みなど,代数曲線を本格的に研究するための基礎知識を与えることを目的としている。環論の必要な知識は第1章で復習しているので,学部3年次以下の学生でも学習することができる。層のコホモロジー理論を使うのが分かりやすい,リーマン・ロッホの定理の証明は他書に譲っているが,その他の結果はできる限りの説明と厳密な証明を与えている。 本書では,代数曲線(詳しくは非特異射影代数曲線)を射影平面曲線の特異点解消として定義している。また,代数曲線の関数体の離散的付値環全体を,離散的付値環と代数曲線の点の局所環という関係で,1対1にパラメータづける集合でもある。離散的付値環の性質は3年次で学習する単項イデアル整域,ユークリッド整域,素元分解整域に通じるもので,取り扱いは3年次の講義の自然な延長である。したがって,3年次の講義の抽象的定義の奥に,代数曲線という具体的で魅力のある内容があることを理解することができるであろう。 一部の結果は引用によっているが,取り扱う結果は本書の説明で十分に理解できるように工夫してある。したがって,興味のある読者は自習することも可能である。