内容
『詩経』は、儒敎における五經の一つとして、日本においても古くから重んじられてきた。およそ知識人であれば、誰でも読んだことのある書であるが、古来諸種の註釈や解釈があってそれぞれに多樣な理解がなされているため、その内容を十全に把握することは容易ではなく、現代においても解釈の分かれる部分が少なくない。
これまでいくつかの研究成果が刊行されてきたが、なかでも本書は、最も的確かつ簡明な訳注書として、中国研究者に長く愛用されてきた。ただし、本書の原本である筑摩書房の「世界文学大系」版と「世界文学全集」版は、いずれも既に絶版となっていた。
本著作集では、筑摩書房「世界文学大系」七A『中国古典詩集』に収載されたものを底本として収録した。なお、その後の著者による訂正や、明らかな誤植や誤記には修正を加えた。さらに現代の読者の読みやすさを考慮して、一部の漢字表記や仮名遣いなどを改めた。