創造性の脳科学~複雑系生命システム論を超えて~
坂本 一寛 著
著者紹介
内容
目次
まえがき I 複雑系として脳を捉える 第一章 複雑系生命システム論で脳を考える 一 脳科学に関心が集まる理由 高齢化,高ストレス化,情報化 近代は一方向的世界像 現代は双方向的世界像 生命は分子だけではわからない 回路がわかれば本質がかるか 脳に見通しもたらす複雑系 二 複雑系生命システム論とは 分岐によるパタン生成 同期する非線形振動子 部分と全体が相互作用する生命システム 第二章 ニューロンを非線形素子と捉える 一 ニューロンとインパルス ニューロンの基本構造 神経活動は生体の電気現象 ホジキンとハクスレイの電位固定 電位固定で異なるイオンの寄与を分離する ホジキンとハクスレイの方程式 二 単純な神経モデルのデザイン 神経活動の特徴 シンプルな神経モデルを求めて 神経細胞活動のモデル化――カギは負性抵抗とお椀の形 BvP振動子――摩擦抵抗を非対称にする ダフィング振動子――収束点のジャンプ KYS振動子モデル――BvPとダフィングから KYS振動子モデルと神経細胞 なぜインパルス――進化の過程はミステリー 第三章 「まとまり」を知覚する――図地分離と共時性 一 第一次視覚野(V1野)と図地分離 方位選択性細胞――特定の向きに反応する 関係性を見出す――図地分離の基本処理 ホロヴィジョン――図地分離の理論モデル V1野の細胞どうしの同期発火 二 無限定環境と共時性 整合的関係性と共時性 あるから見え、見るからある セレンディピティ――共時的秩序を見出す ヘブ則――共時的秩序を構造化する どのように整合的関係をつけるか 第四章 行動を創発的に計画する――前頭前野のダイナミクス 「ひらめく」と「複雑なことができる」との違い 最終目標を達成するには即時目標が必要 経路計画課題 計画,問題解決――前頭前野のはたらき 発火率の符号化する情報が遷移する 計画と整合的な関係性 計画をひらめく瞬間に同期発火 ひらめく前兆としての発火ゆらぎの上昇 計画は前頭前野の創発現象 II 創造性の原理を求めて 第五章 仮定を用いて問題を解く――脳の計算理論と拘束条件 一 問題のレベル分けと脳の理解 デヴィッド・マーの三つのレベル レベル1――情報処理の目的 レベル2――アルゴリズムと表現法 レベル3――ハードウェアによる実現法 レベルを分けて理解することは脳の本質 二 問題を解くために必要な拘束条件 2次元から3次元像を計算する 滑らか拘束条件 創発と不良設定問題 第六章 暗黙の仮定を創る――仮設生成と脳の配線 一 創られる必要がある拘束条件 答えは状況により変化する① 答えは状況により変化する② 拘束条件を創りながら問題を解く さまざまに呼ばれる「拘束条件」 二 思考の型と仮設 思考の型①――演繹 思考の型②――帰納 思考の型③――仮設生成(アブダクション) 確率的パタン認識と思考型 仮設に備わるいくつかの性質 仮設は外からは与えられない 三 仮設生成――配線で投票する 精緻な構造を持つ脳の配線 配線の計算能力 ハフ変換――パラメータ空間への投票 方位選択性細胞をハフ変換と見なす ハフ変換と仮設との類似性 仮設生成の実装――「部分」と「全体」逆転 投票による仮設生成には問題もある 第七章 隠れた部分を推定する――遮蔽補完と仮設生成 一 仮設生成は具体的に研究できる 身の回りには補完問題があふれている 遮蔽補完図形を考える 一意には決まらない遮蔽補完 遮蔽補完は仮設生成の好例 「単純で美しい」ということ 遮蔽補完モデルでは「単純で美しい」を明示的に扱う 二 V4野の曲率細胞でモデル構築 V4野の曲率細胞 輪郭の曲率の検出 直線と曲線を統一して扱う球面幾何学 大円・小円変換による輪郭の分割 V4野の性質を用いた対称性の評価 第一のアイディア――圧縮による回転対称の検出 第二のアイディア――反時計・時計回りによる線対称の評価 部分対称性を評価して補完する 多義的な解釈を可能にする計算モデル 三 遮蔽補完の計算モデルは何を語るか 創造の糸口は多角的な見方から 遮蔽補完モデルは仮設生成か 遮蔽補完モデルと複雑系の融合 創造性のメカニズムはどのようなものか 最終章 創造性の更なる源を求めて 人類に反旗を翻す究極のロボット 問題を孕む「ロボット三原則」 無限定環境に向き合うために 極めて根源的な「我―汝」問題 「汝」に「与える」 「愛」――関係から生じる責任 ロボットが備えるべきメタルール ニューロ・コーチング 付録 複雑系生命システム論入門 付録A 複雑系における秩序の自律生成 一 平衡からの乖離とパタン生成 時空間パタンが生成する自己組織現象 プリゴジンの散逸構造 どのように構造できるか――分岐理論 系を駆動し,予知を可能にする「ゆらぎ」 大きな警鐘――ハーケンのシナジェティクス 二 非線形振動現象・振動子 摩擦のない線形振動と初期値保存 多くの振動は非線形 ファン・デル・ポール振動子はなぜ振動するか 三 非線形振動子間の引き込み現象 蔵本振動子――引き込み現象の理解に向けて 振動の引き込み同期はなぜ注目されるか 付録B 部分と全体――生命システムの中心問題 一 部分と全体が相互作用する「筋肉」 筋肉の単純モデル「流動セル」 流動と反応速度の相関 ミクロとマクロの相互作用 生命における部分と全体の整合性 二 部分が全体を「内部観測」する粘菌 単純な生物モデル「粘菌」 振動による個体全体の統合 好物による振動数の増加 どこにいるかを「知る」 位相勾配の「内部観測」 位相勾配が振幅差に反映する 振動子の結合と振幅の変化 サイズ不変位置情報の重要性 あとがき Brain Science of Creativity: Beyond the Complex Systems Theory of Biological Systems Kazuhiro SAKAMOTO
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