家庭教育が大切だということは繰り返し語られます。そして数多くの家庭教育論が刊行されています。家庭教育についてはほとんど語り尽くされていると言っても過言ではありません。そのような中でアルフィー・コーンの家庭教育論の翻訳を思い立ったのは、この本が、家庭教育のハウツーではなく、子育て論の歴史を踏まえた上で、親子の関わりや子どもに対する姿勢、そして子どもをどのような人間に育てるべきかについての原則を明確に打ち出している書物であるからです。
コーンはこれまで、学校教育での競争原理や報酬・罰の弊害を鋭く指摘してきました。本書ではそれを家庭教育の場面で論じています。例えば、子どもに親が期待するよう振る舞わせようとすることで、子どもは親の言うとおりにしないと愛されないと思ってしまい、安定的な自尊心が持てなくなると述べています。そして、子どもの存在それ自体を愛し、自己決定の機会を多く与え、社会を変革できる主体に育てることの重要性を語っています。
コーンの見解には様々な意見があると思いますが、一つの問題提起として、読者が家庭教育を改めて考えるきっかけとなることを期待しています。
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