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税務会計分析~税務計画と税務計算の統合~
鈴木一水
著
発行年月 |
2013年02月 |
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言語 |
日本語 |
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媒体 |
冊子 |
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ページ数/巻数 |
17p,430p |
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大きさ |
22cm |
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ジャンル |
和書/社会科学/経営学/会計学 |
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ISBN |
9784839421250 |
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商品コード |
1012495598 |
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NDC分類 |
336.98 |
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本の性格 |
学術書/実務向け |
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新刊案内掲載月 |
2013年04月1週 |
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商品URL
| https://kw.maruzen.co.jp/ims/itemDetail.html?itmCd=1012495598 |
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著者紹介
鈴木一水(著者):鈴木一水(すずきかずみ)
昭和34年 岡山市生まれ
昭和61年 公認会計士試験第3次試験合格
平成2年 神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程単位修得退学
平成3年 近畿大学商経学部講師
平成7年 神戸大学経営学部助教授
平成24年 神戸大学大学院経営学研究科教授、博士(経営学)
内容
税務会計は、企業の活動やその他の事象を識別、測定、記録、分類、整理し、企業の所得に対する課税の基礎となる所得金額と税額を計算し、その結果を報告する過程であり、経済社会秩序にとって必要不可欠な社会システムの一部なのである。
このような税務会計を分析対象とする研究は、伝統的に法人税法の解釈論として発展してきた。これは、戦後の申告納税制度の導入によって納税者側に生じた税法解釈の需要にこたえる必要があったためと考えられる。しかし、課税は企業価値の低下を招くので、税法を適用した結果を事前に予測して、税引き後キャッシュフローが最大になるように税務計画を立て実行すると考えると、税法の事後的な解釈・適用の前に、まず企業が税務計画を立て実行し、その結果として税負担や資源が配分される過程の実態を明らかにすることが必要である。企業の税務会計実務の実態を解明することなく税務法令の解釈論を展開しても、その時々の企業の税務担当者の業務に役立つくらいで、税法適用結果すなわち税制の経済的帰結を説明したり予測することはできない。
特に今日のように会計制度や税制が頻繁に改正されると、現行の税務法令に関する個別知識はすぐに古くなり、個別的な税務法令解釈論の有効性は短命化する。むしろ税制が企業を取り巻く利害関係者に及ぼす影響を予測するための考え方を確立する方が、長期的には意味を持つことになろう。なぜならば、企業には、会計基準や税務法令の繰り返される変更に対して迅速に順応するために、代替的な制度の下での企業価値の変化を予測する能力が求められるようになり、そうした税制等に対する企業の反応を通じた所得分配や資源配分への影響を予測することは、政策立案者にとっても重要だからである。
米国では、会計基準の経済的帰結に関する財務会計研究とほぼ並行して、すでに1980年代から、税制の経済的帰結に関する研究が税務会計研究の分野で展開され、1990年代に入ると、税務会計を媒介として税制が企業の組織や活動に及ぼす影響を分析して税務会計現象を解明する分析枠組みが確立された。この分析枠組みの特徴は、企業を契約の集合体とみて、税務計画と税務計算を、企業を構成する契約の締結、履行および強制に伴う税コストやその他のコストを全体として最小化することによって事業の組織化や企業の活動を効率化するための組織均衡システムと理解することにある。この分析枠組みを採用する税務会計研究は、組織の効率的な設計と運行を分析の対象とする組織理論としての性格を帯びることになる。この結果、税務会計研究は、企業の税務担当者の業務のための技術論にとどまることなく、日本企業の特殊性の解明にも資することになる。
かつて雑誌『會計』連載時に紹介した分析枠組みを基礎とし、その後の研究分野の拡大と研究方法の発展を織り込みつつ、近年の日本における会計制度と税制の変更が日本企業の行動に及ぼしてきた影響を分析した成果をまとめた。