内容
発生学を遺伝学の言葉で語らなければならないというキャンペーンの時代は瞬時にして過ぎ去り,発生現象を遺伝子の働きの現われとして理解し,これを分子の言葉で語るのがきわめて当然のことと受入れられる時代に突入した.現在はその時代の真っ只中にあり,発生学は一時の停滞を脱して再びかつての栄光を取り戻しつつある.これを象徴するかの様に1995年のノーベル医学・生理学賞は,シュペーマンによる形成体の発見以来60年ぶりに発生学の成果に対して与えられた.ルイスら3人による,ショウジョウバエ初期発生の遺伝学的制御の研究である. 本書は,動物や昆虫の発生課程を縦糸におき,発生の各段階の重要な現象を遺伝子の働きから解説したものである.