内容

目次

第一話 青磁ひとすじに制作を続ける陶芸家の省造。ある日デパートの注文品とともに焼きあがったその壺の青く美しい佇まいは、妻や古道具屋、デパート担当者…見る者を魅了した。 第二話　 定年後、家でぼんやりする夫を持てあました妻は、世話になった副社長へのお礼にデパートで青い壺を買い、夫に持たせた。古巣の会社を訪れた彼の奇妙な行動に、周囲は震撼する。 第三話 副社長の夫の部下の女性と、甥っ子を見合いさせるため二人を自宅に呼んだ芳江は、今どきの人たちが考えていることを知って驚き、呆然とする。 第四話　 青い壺に美しく花を生けようと奮闘する芳江。孫を連れた娘の雅子が急に帰ってきて、婚家の醜い遺産争いを愚痴るのだが、そのうちに話題は芳江夫婦の財産へとうつってゆく。 第五話 老いて目が見えなくなった母親を東京の狭いマンションに引き取った千代子。思いがけず心弾む生活だったが、念の為に受診した病院で「手術したら見えるようになる」と言われ…… 第六話 夫婦ふたりで、戦後の焼け跡から始めたこじんまりとしたバー。賭けを始める若者グループ、酔って泣き始める女客の間にいた医師の石田は、「御礼」と書いた細長い荷物を置いて帰った。 第七話 息子の忘れ物としてバアのマダムが届けてくれた壺をみて、老婦人は、 戦時中の亡き夫との思い出がよみがえり、饒舌に語りだす。 外務官僚だった夫との思い出は輝きに充ちていて……。 第八話 長女が嫁ぎ、長男はアメリカに留学。姑は他界した。手に入れた自由な時間は厚子に寂しさを連れてきた。ある日、夫にレストランに誘われ久しぶりに着飾って出かけるが、帰宅すると自宅に異変が起きていた。 第九話 寮生活だった女学校の卒業から半世紀、弓香は同級生たちと久しぶりに京都で集まる。戦争を経て子育ても終えた彼女たちは、家庭の状況も経済状態もそれぞれで……。 第十話 母校だったミッションスクールの初等科に栄養士として就職した、弓香の孫娘の悠子。野菜を食べさせたいと工夫を凝らすが、ある日、自信満々に提供したスープが酷評されてしまう。 第十一話 世話になったシスターが実母の見舞いのため、45年ぶりにスペインに帰郷するときいた悠子は、青磁の壺をプレゼントする。壺はついに、海をわたる！ 第十二話 気難しくて、清掃係に怖れられている入院患者。スペイン旅行中に急性肺炎になったという彼は、病室に飾った青い壺に触られそうになると、怒鳴るのだった。 第十三話 高名な美術評論家を訪ねた陶芸家の省造。評論家は、スペインで見つけた掘り出しものとして、青い壺を見せる。１２世紀初頭のものだろう、と見立てを熱く語りだすのだが……。