内容
カバー写真の恐ろしげな生物。これは「アメリカ鉤虫」といって、かつて米国で猛威をふるった寄生虫だ。米国では現在は根絶されたこの寄生者に、著者はわざわざメキシコへ赴いて感染しようとする――。なぜか? 著者は「自己免疫疾患の全身脱毛症」ほか、数々のアレルギーを患っている。有効な治療法はない。しかし、こうした自己免疫性の病の治療法として、この寄生虫が売買されているというのだ。サイエンスライターの著者は、自らこの療法に挑むとともに、寄生者と病の関係についての果てしない探究に乗り出した。
かつて人間は体内に必ず多くの寄生虫、細菌、ウイルスを持っていた。だが近代、公衆衛生は劇的に向上し、それらは駆逐され、感染症は激減した。しかし、一部の科学者はそれに反比例するように新たな病が増えていることに気づいていた。花粉症、喘息、アレルギー、そして自己免疫疾患。クローン病、多発性硬化症といった聞きなれない病が明らかに増加している。これらの出来事には関連があるのだろうか? 「寄生者の不在」が、我々の体内の免疫反応のバランスを乱し、病をもたらしているのだろうか?
著者は8500本にも及ぶ研究を渉猟し、多くの科学者にインタビューを重ねて、この疑問に迫る。各々の病の専門家たちが予感しつつも見出しえなかった、連鎖する「不在の病」の全貌が徐々に見えてくる――! そして著者自身の寄生虫療法の結末は!?
まさに「すぐそこにある」人類の危機があますところなく描き出される。解説の福岡伸一氏も「現時点での決定版的解説書。私たちの清潔幻想に警鐘を鳴らす問題作だ」と驚嘆する、超大作科学ノンフィクション!