内容
20 世紀の最も重要な小説家とも言われるアイルランドの作家ジェイズム・ジョイスは,『ダブリンの市民』,『若い芸術家の肖像』,『ユリシーズ』などの著者として西洋の文学界において揺るぎない地位を保っている。ジョイスは,当時,イギリスやカトリック教会に「支配されていた」祖国から,自由な表現をしたいと「自発的亡命」を果たし,トリエステや,チューリッヒ,パリなどで執筆を続けた。彼は作品の舞台として,一貫して故郷の首都ダブリンを定め,そこに生きる人々の,自然で,ありのままの姿を映し出そうと執筆に邁進した。後になっては,英語で全てを表現するのは困難と,新たな言語や文体の創造を試みる。
本書では,厳しい貧困や眼病,娘の精神の病の発症など様々な困難と戦いながら生きたジョイスの生涯を辿り,彼の語るアイルランドの歴史を紐解きながら,人間ジョイスを考え,その思想の背景を探っていく。