血液内科ゴールデンハンドブック 改訂第2版
内容
目次
【改訂第2版序文】 『血液内科ゴールデンハンドブック』は、ジュニアレジデントやシニアレジデントを主な対象とし、血液内科領域の診療の基本をコンパクトにまとめたマニュアルで、白衣のポケットに入るハンディな体裁を基本コンセプトとしている。さらに、ベッドサイドや外来で診療実習を行う医学生や、多忙を極める血液内科専門医にとっても利用価値の高い、手頃なマニュアル本となっていることから、幸い、大変好評を博している。 血液内科は進歩の大変早い領域で、2011年に本書の初版を発行して以来、この5年間に病態研究・診断学が一段と進み、画期的な新薬も次々と登場してきている。そこで、南江堂と相談し、改訂第2版をこの度出版することになった。 初版の執筆は、内容に一貫性・統一性を持たせるために、自治医科大学内科学講座血液学部門および関連部署のメンバーが担当したが、今回の改訂第2版では、小澤・坂田に神田が加わった3名の編集体制とし、自治医科大学附属さいたま医療センター血液科、さらに東京大学医科学研究所附属病院血液腫瘍内科のメンバーが執筆陣に加わり、より充実した布陣となっている。 構成は、「Emergency-救急患者への対応」、「外来パート」、「疾患パート」「主な検査法」「主な治療法」「主な薬剤の特徴網羅し、さらに最新の知見を踏まえた形にバージョンアップしている。例えば、従来汎用されてきた造血器腫瘍WHO分類第版は、2016年に骨髄系腫瘍と急性白血病に関して改訂が行われたため、本書の内容もできるだけそれに対応するように努めた。 本書が全国の医療機関のレジデントや血液内科医に、これまで以上に広く活用されることを願っている。 2016年9月 小澤敬也 坂田洋一 神田善伸 【書評】 循環器内科や消化器内科のように内視鏡やカテーテルを駆使して消化管出血や血管閉塞を治療する外科的内科と異なり、血液内科は内科的内科である。たとえば、造血器腫瘍では、腫瘍細胞が容易に採取でき、その特性を染色体、表面抗原、遺伝子異常などのさまざまな側面から検索することが可能である。この点は固形がんを扱う他診療科と大きく異なり、造血器腫瘍の病態の解明、そこに立脚した新規治療法の開発に大きく貢献している。しかし一方で、疾患ごとにさまざまな疾患特異的な細胞表面マーカーや遺伝子異常を理解することが必要となり、これがレジデントや医学生にとって、血液内科が“とっつきにくい”、“血液内科医は理解できない言語を使っている”と敬遠される理由の一つとなっている。 本書の構成は、血液内科医を選択する前のレジデントを対象として、彼らの視点に立ち、彼らが日常診療のなかで血液疾患に遭遇したときに、どのように診療を進めていけばよいかが、emergency-救急患者への対応にはじまり、外来パート、疾患パートと彼らが実際の診療のさまざまな側面で利用し学べるように、段階的に構成されている。また、具体的な内容も理解しやすく記載されると同時に、必要かつ十分な事項がコンパクトにまとめられている。血液内科領域における病態の解明、そこに立脚した検査法、診断、治療の進歩には目覚ましいが、今回改訂された第2版では、2011年の初版から5年間の血液内科の臨床に密接に関連する進歩の多くが取り込まれ、かつ実際の臨床現場で役立つように配慮された構成となっている。言葉を換えていえば、このハンドブックは決して初心者向けというわけではなく、血液専門医が、知識を再確認するうえでも活用できるものとなっているといえる。 現時点での標準的なレジメンの詳細が記載され、それとは別に主要な薬剤の使用の注意点は、忙しい臨床の場において大いに役立つし、レジデント1人でも、標準的な診療ができるように配慮されている。さらに治療法に関しては、根治を目指す造血器腫瘍の治療を検討する場合に不可欠な妊孕性温存の説明や、妊娠時の治療方針などの項目が取り上げられていることは特筆に値する。高齢化社会のなかで、単に血液疾患患者だけを治すだけでなく、次世代の確保にも配慮したアプローチをこのようなハンドブックに盛り込んだ編集者の視点は素晴らしい。 社会の高齢化と同時に、血液内科医の高齢化も進んでいる。このゴールデンハンドブックを活用したレジデントの多くが血液内科を目指してくれることを心から願っている。 臨床雑誌内科119巻4号(2017年4月増大号)より転載 評者●慶應義塾大学医学部血液内科教授 岡本真一郎 【内容目次】 I章 Emergency-救急患者への対応 1.救急医療における症候と血液疾患 A 重症貧血 B 重篤な出血傾向 C ショック D 意識障害,急性発症の神経症状など E 呼吸困難 2.血液疾患のEmergency A 腫瘍崩壊症候群 B 造血器腫瘍に伴う高カルシウム血症 C 過粘稠度症候群 D 溶血発作 E 播種性血管内凝固症候群とその類縁疾患 F 輸血関連急性肺障害 II章 外来パート 1.血液疾患における身体所見の取り方 2.血液疾患における一般検査の進め方 3.血液疾患における発熱 4.貧血,多血症 A 貧血 B 多血症 5.白血球減少,白血球増加 A 白血球減少 B 白血球増加 6.汎血球減少 7.リンパ節腫脹,肝脾腫 8.出血傾向 9.血栓性素因・血栓傾向 10.血液疾患でみられる皮膚粘膜所見 III章 疾患パート 1.造血器腫瘍 A 急性白血病 B 慢性骨髄性白血病 C 骨髄増殖性腫瘍 D 骨髄異形成症候群 E Hodgkinリンパ腫 F 非Hodgkinリンパ腫 G 成人T細胞白血病/リンパ腫 H 慢性リンパ性白血病と類縁疾患 I 多発性骨髄腫(MGUSを含む) J 原発性マクログロブリン血症 K アミロイドーシス L 参考 1)血球貪食症候群または血球貪食性リンパ組織球症 2)伝染性単核球症 3)壊死性リンパ節炎 2.赤血球系疾患 A 鉄欠乏性貧血 B 巨赤芽球性貧血 C 再生不良性貧血 D 赤芽球癆 E 発作性夜間ヘモグロビン尿症 F 自己免疫性溶血性貧血 G 遺伝性球状赤血球症 H 二次性貧血 I 二次性および相対的赤血球増加症 3.出血・血栓性疾患 A 血小板機能異常症 B 特発性血小板減少性紫斑病 C 血友病 D von Willebrand病 E 深部静脈血栓症 F 抗リン脂質抗体症候群 G 播種性血管内凝固症候群 H 血栓性血小板減少性紫斑病・溶血性尿毒症症候群 I ヘパリン起因性血小板減少症 IV章 主な検査法 1.末梢血塗抹標本 2.骨髄穿刺・骨髄生検 3.リンパ節生検 4.フローサイトメトリー 5.腰椎穿刺 6.染色体検査・FISH検査 7.遺伝子診断 8.溶血の検査 9.出血・凝固時間と凝固関連検査 10.血液型と輸血関連検査 11.細菌・真菌培養検査 12.ウイルス学的検査 13.超音波検査 14.画像診断 V章 主な治療法 1.造血器腫瘍に対するレジメン集 A 急性骨髄性白血病 B 急性前骨髄球性白血病 C 急性リンパ性白血病 D Ph陽性急性リンパ性白血病 E 骨髄異形成症候群 F Hodgkin リンパ腫 G 非Hodgkin リンパ腫 H 成人T細胞白血病/リンパ腫 I 慢性リンパ性白血病 J 多発性骨髄腫 2.血友病・後天性血友病に対する止血療法 3.中心静脈カテーテル 4.発熱性好中球減少症 5.輸血療法 6.造血幹細胞移植 A 対象疾患と適応の考え方 B ドナー・幹細胞選択 C 移植前処置 D GVHDの予防と治療 E 移植後の感染管理 F 移植後の非感染性合併症(GVHDを除く) 7.放射線治療 8.合併症などがある場合の基本的考え方 A 肝障害と化学療法 B 免疫抑制・化学療法により発症する B 型肝炎対策ガイドライン C 腎機能障害 D 心肺疾患 E 糖尿病 9.妊娠時の治療方針 10.妊孕性温存 VI章 主な薬剤の特徴と使い方 1.抗腫瘍薬 2.分子標的治療薬 3.造血因子その他 4.副腎皮質ステロイド 5.免疫抑制薬(ATGを含む) 6.鉄剤,ビタミンB12製剤 A 鉄剤 B ビタミンB12製剤 7.骨カルシウム代謝薬 8.鉄キレート薬 9.抗菌薬 10.抗ウイルス薬 11.抗凝固薬,抗血小板薬 12.止血薬と凝固関連因子製剤 A 止血薬 B 凝固因子関連製剤 13.制吐療法 14.造血器悪性腫瘍における緩和医療のための 薬剤 略語・略号一覧 索引
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