内容
幸せのレシピ。隠し味は、誰かを大切に想う気持ち――。うつくしい高台の街にある小さな洋菓子店で繰り広げられる、愛に満ちた家族の物語。香田陽皆(こうだ・ひな)は、雑貨店に勤める引っ込み思案な二十八歳。地元で愛される小さな洋菓子店「スイート・ホーム」を営む、腕利きだけれど不器用なパティシエの父、明るい「看板娘」の母、華やかで積極的な性格の妹との四人暮らしだ。ある男性に恋心を抱いている陽皆だが、なかなか想いを告げられず……。(「スイート・ホーム」)料理研究家の未来と年下のスイーツ男子・辰野との切ない恋の行方(「あしたのレシピ」)、香田一家といっしょに暮らしはじめた〝いっこおばちゃん〟が見舞われた思いがけない出来事(「希望のギフト」)など、稀代のストーリーテラーが紡ぎあげる心温まる連作短編集。どんなに疲れて帰ってきても、仕事でうまくいかないことがあっても、ここまで来れば、もう大丈夫。駅からバスに乗って、ふたつ目のバス停で下りて、色づき始めた街路樹を眺めながら、甘い香りのする場所へと向かう。そこでは、おいしいスイーツと、なごやかなパティシエ一家が、私の到着を待っていてくれる。(本文より)さりげない日常の中に潜む幸せを掬い上げた、心温まる連作短篇集。