内容
アメリカ研究の第一人者がみずから編みながら遺された論集を、ここにおくる。プリマス植民地をはじめ、アメリカ建国前後の政治と宗教(制度としての政教分離と国民の心情としての政教融合)の実態からアメリカの根っこを描き、その水脈がその後の外交・戦争・大統領・議会などにどう現れてくるかが明らかになっている。転換期を迎えたアメリカを知るために、なにより建国以来現在までを貫くアメリカを理解するために、さらにアメリカの「反知性主義」の一端を学ぶために、高い学術レベルを保ちながら全体を見据えて研究してきた著者の12章の遺稿は、この国の今後のアメリカ研究にとって不可欠なものであろう。また、巻末の2編「草創期アメリカ研究の目的意識――新渡戸稲造と「米国研究」」および「日本におけるアメリカ研究――その歴史と今後の課題」は、学問・文化レベルでの日米関係史を描いた、きわめて貴重な資料でもある。