内容
びまん性肺疾患のなかで、特に日常臨床で見逃してはいけない難治群について、病態・治療戦略を中心に症例提示を交えながらその道のエキスパートにご解説いただいた。特に,特発性肺線維症(IPF)は原因不明の特発性間質性肺炎の多くを占め、5年生存率30%以下という極めて予後不良の疾患で、合併する肺癌や急性増悪により死亡する例が多いため、基本的な治療法の確立とともに、このような合併症に対する治療法の確立が喫緊の課題である。そこで、慢性期IPFの病態、薬物療法とその作用機序、非薬物療法(酸素療法とリハビリテーション)、急性増悪期の病態、最新の薬物療法の進歩とその作用機序、肺癌合併時の外科療法の適応と術後増悪の予防、化学療法の適応と限界について概説していただいた。また、臨床現場で混乱することが多い非特異性間質性肺炎、特発性分類不能型間質性肺炎の診断と管理、治療についてもご解説いただいた。他の書籍では扱われることの少ない①上葉優位型肺線維症(PPFE)、②肺胞微石症、③閉塞性細気管支炎、④ヘルマンスキーパドラック症候群合併間質性肺炎は、稀少・難治性のびまん性肺疾患群(③,④は平成27年に国の指定難病に認定)であるため、これまで十分な疫学調査が行われず、診断基準や重症度評価の策定も進まなかったが、近年それらの内容について平成26~28年度厚労省びまん性肺疾患に関する調査研究班(本間班)が中心となり、わが国初の調査・研究結果が報告されたので、その内容も含めて代表者にご解説いただいた。また,難治性サルコイドーシス、稀少ではあるが見逃してはいけないリンパ脈管筋腫症、肺胞蛋白症についても概説していただいた。なお、各疾患とも実際の症例を提示することにより、一層理解が深まることを期待した。本特集により、呼吸器を専門とする臨床医や後期研修医が臨床現場でこれら難治群を鑑別診断に挙げ、明日からの臨床に対応できるように役立てて頂ければ幸いである。