丸善のおすすめ度
明治出版史上の金港堂~社史のない出版社「史」の試み~
稲岡 勝
著
発行年月 |
2019年03月 |
---|
|
|
言語 |
日本語 |
---|
媒体 |
冊子 |
---|
|
|
ページ数/巻数 |
415p |
---|
大きさ |
22cm |
---|
|
ジャンル |
和書/総記/総記/書誌・出版 |
---|
|
|
ISBN |
9784774406718 |
---|
|
商品コード |
1029837396 |
---|
NDC分類 |
023.067 |
---|
|
|
本の性格 |
学術書 |
---|
|
新刊案内掲載月 |
2019年05月1週 |
---|
|
商品URL
| https://kw.maruzen.co.jp/ims/itemDetail.html?itmCd=1029837396 |
---|
著者紹介
稲岡 勝(著者):稲岡勝(いなおか・まさる)
1943年、上海生まれ。すぐ近くに商務印書館があった。早稲田大学政治学科および図書館短期大学別科卒業、1972年から東京都立図書館勤務。1999年から都留文科大学国文学科教授情報文化担当、専攻は明治の出版文化史。10年勤めて退職後は図書館、文書館、古書展に通い埋もれた出版者を手掘り中。執筆予定としては「教科書トラスト帝国書籍の成立と崩壊」、また山梨県の地方新聞『甲陽新報』(印刷は内藤伝右衛門)も取りあげたいテーマである。
内容
近代出版史研究の画期
膨大な資料の収集、検証、そして批判。
先行研究なき教科書肆の歴史を記述し、未開の「史」の研究手法を明らかにする。
稲岡さんは怖かった。都立中央図書館特別文庫室の受付で相好崩さず終始作業に集中している姿に、まだぺいぺいのころの私は近寄りがたい威圧感を覚えていた。「なぜ役人附ばかり見ているのか」と突然声を掛けられた時など私の何かがきゅっと縮んだ。これは稲岡さんの論文を読んでしまっていたことが大きい。
「金港堂小史―社史のない出版社『史』の試み」は衝撃であった。近代出版史における教科書出版の重要性を初めて具体例を以て説得的に示した画期的な大論文である。透徹した見通しの下、徹底した資料収集とそれらを駆使した論の盤石たること、そして先行研究をバッサリ切り伏せる筆の切れ味、対象とする時代や分野は異なっていたものの、同様に出版史研究を志す私をびびらせていたのである。その後も若輩を縮み上がらせるような論文を精力的に執筆し続け、今なお近代出版史研究の最先端としてこの分野を牽引している。
今回上梓の一冊は、今後も揺るぎない指針としてわれわれを導き続けてくれるにちがいない。背表紙を見て、きゅっと引き締まりながら、私も後を追いかけていくことにする。
(中央大学文学部教授 鈴木俊幸)
近代史に足を踏み入れた者ならば、書肆「金港堂」や社主の「原亮三郎」とはどこかで出会っていることだろう。たとえば明治期の教科書や二葉亭四迷『浮雲』等の奥付で、あるいは多額納税者として、あるいは商務印書館の設立者として。
本書は、その金港堂の営為を主軸にして近代出版史を記述するものである。そして、その記述をがっしりと根底から支えているのが副題「社史のない出版社「史」の試み」だ。既存の史資料や社史は信頼するに足るのか。他にどのような史料がどこにあり、どのようにアプローチしていけばよいのか。その史料をどのように読み、解釈するのか。そもそも史料の信頼性とはなにか。およそ「史」を構築する=語るにあたって取るべき調査・検証・批判の実例がここにある。本書は出版史研究書であるとともに、近代史研究における史料論・方法論の書でもあるのだ。
今後、「史」に携わる者にとって必読となるであろう、鶴首待望の書の刊行である。
(奈良女子大学研究院人文科学系准教授 磯部敦)