著者紹介
福田恆存(著者):評論家,劇作家,演出家。東京大学英文科卒業。 1936年から同人誌『作家精神』に,横光利一,芥川龍之介に関する評論を発表。第2次世界大戦後すぐに文芸評論家として活動を始め,やがて批評対象を文化・社会分野全般へと広げた。劇作は 48年の『最後の切札』に次いで 50年『キティ颱風』を発表,文学座で初演され,以後文芸部に籍をおいた。 52年『竜を撫でた男』で読売文学賞受賞。 63年芥川比呂志らと文学座を脱退,現代演劇協会,劇団雲を結成して指導者となる。 70年『総統いまだ死せず』で日本文学大賞受賞。シェークスピアの翻訳・演出でも知られ,個人全訳『シェイクスピア全集』 (15巻,1959~67,補4巻,71~86) がある。著書はほかに『人間・この劇的なるもの』 (55~56) など。 81年日本芸術院会員。
内容
戦後日本の問題の本質をことごとく抉り出し今なお新しい批評家福田恆存の「自伝」といっていい文章があった。福田恆存全集(全8巻、文藝春秋)の後書にあたる「覚書」は家族のこと、学生時代、交友関係はもとより劇団設立やチャタレー裁判、論争など平易なことばで綴っている。また、覚書6は「フィックションとは何か」という最後の論考としても読める。神も歴史も国家も、そして「自己」さえフィクションにすぎない。が、だからこそ「創造物」であり「建造物」で、それは一人ひとりがその崩壊を防ぐためにフィクションを作り上げていく努力をしなければならないと説く。福田恆存による福田恆存入門である『福田恆存評論集』(全7巻、文藝春秋)の後書も併録し、いま福田恆存論で脚光を浴びる気鋭の文芸批評家・浜崎洋介氏の解説を加え、福田恆存の「人間観」に光を当てる。