著者紹介
ステファヌ・ルルー(著者):フランス・レンヌ市のリセ・ブレキニー「映画オーディオヴィジュアル」クラス教授。レンヌ第2大学講師。アニメーション映画研究者。2007年、レンヌ第2大学に提出した論文‟Scénographie et cinématographie du dessin animé: de Toei à Ghibli (1968-1988), le parti du réalisme de Isao Takahata et Hayao Miyazaki”により博士号取得。著書Isao Takahata, cinéaste en animation : modernité du dessin animé, 2010, Hayao Miyazaki, cinéaste en animation: poésie de l’insolite, 2011(『シネアスト宮崎駿』岡村民夫訳、みすず書房2020)。
岡村民夫(翻訳):1961年、横浜に生まれる。立教大学大学院文学研究科単位取得満期退学(フランス文学専攻)。法政大学国際文化学部教授。表象文化論。著書『旅するニーチェ リゾートの哲学』(白水社 2004)『イーハトーブ温泉学』(みすず書房 2008)『柳田国男のスイス――渡欧体験と一国民俗学』(森話社 2013)『立原道造――故郷を建てる詩人』(水声社 2018)、共著『映画史を学ぶクリティカル・ワーズ』(フィルムアート社 2003/ 増補版2013)『宮沢賢治 驚異の想像力』(朝文社 2008)『温泉の原風景』(岩田書院 2013)『燦然たるオブジェたち――小津安二郎のミクロコスモス』(花書院 2014)『国際都市ジュネーヴの歴史――宗教・思想・政治・経済』(昭和堂 2018)、訳書『デュラス、映画を語る』(みすず書房 2003)ルルー『シネアスト宮崎駿――奇異なもののポエジー』(みすず書房 2020)、共訳ドゥルーズ『シネマ2*時間イメージ』(法政大学出版局 2006)ほか。
内容
「このジャンルのファンは彼のヴィジュアルな豊かさを讃え、評論家は彼のテーマの密度を誉めるが、彼が同時に、たぶん何にもまして真の映画演出家であるということを強調することがあまりにしばしば忘れられているのだ。(…)登場人物たちが字義的意味でリアルではないとしても、彼らはやはりシーンの空間──デッサンによって創造されたものであろうと──のなかに住んでいるのであり、映画表現に特有の手段はやはり監督にとって原材料なのである。本書においてアニメがフレーミングの階梯の変化、カメラの移動、画面の奥行きの作用、モンタージュや音声の作業などを伴った〈ほんとうの映画〉のように扱われていると知っても驚かないでいただきたい。それはずっと前から当然のことなのだ。彼の数多くの才能のなかでも間違いなくもっとも配慮されてこなかったシネアスト宮崎という側面を理解するため、こうした演出がどのように内密に物語の組織化に関与し、かくして作品を観る際の喜びに関与しているのかが分析されることになろう」
スタッフとして参加した『太陽の王子 ホルスの大冒険』『長靴をはいた猫』『どうぶつ宝島』から監督作品『ルパン三世 カリオストロの城』『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』まで。世界の映画史、アニメーション史をふまえつつ精緻な作品分析を積み重ねたモノグラフィ。