国際法の誕生~ヨーロッパ国際法からの転換~
中井 愛子 著
内容
目次
序 論 国際法と非欧州 ――非欧州諸国は国際法に何をもたらしたか? 1 本書の目的、問題意識および構成 (1) 国際法とは何か――近代国際法と非欧州諸国 (2) 本書の構成 2 本書の研究対象 (1) ラテンアメリカ国際法の定義 (2) ラテンアメリカ諸国の範囲 第一部 ラテンアメリカ国際法の生成 はじめに 第Ⅰ章 ラテンアメリカ国際法の誕生 ――「米州公法」の追求 1 ラテンアメリカ国際法の起源 (1) ラテンアメリカ諸国の独立 (2) ラテンアメリカ国際法のはじまり 2 ボリーバルの米州公法構想 (1) 米州公法の構想 (2) 米州公法とモンロー主義――共通点と相違点 3 パナマ会議――第1回地域的国際会議 (1) パナマ会議における米州公法創出計画 (2) パナマ条約 4 結論――米州公法としてのラテンアメリカ国際法の本質 (1) ラテンアメリカ国際法の存在理由 (2) ラテンアメリカ国際法と一般国際法 (3) ラテンアメリカ国際法と欧州公法 第Ⅱ章 パナマ会議後のラテンアメリカ国際法の展開 1 パナマ会議後の地域的国際会議 (1) 連合化を目的とする諸会議(1847-64) (2) 法の問題に関する専門的・技術的諸会議(1877-) 2 汎アメリカ会議 (1) 米州諸国国際会議・米州会議 (2) 特別会議 3 地域的国際会議とラテンアメリカ国際法の展開 4 ラテンアメリカ国際法の実定的諸原則およびドクトリン (1) ラテンアメリカ国際法の諸原則 (2) 地域的特徴を有するドクトリンおよびその他の実行 第Ⅲ章 ラテンアメリカ国際法の理論の形成 1 ラテンアメリカ国際法の概念化 (1) ラテンアメリカ国際法の概念をめぐる学術的議論 (2) 本章の構成 2 ラテンアメリカ国際法の理論の形成(1844-) (1) アルベルディのラテンアメリカ国際法論 3 ラテンアメリカ国際法の「存否」をめぐる3つの論争(1883-1923) (1) アルコルタのラテンアメリカ国際法論:第1論争(1883)――Nueva revista de Buenos Aires 誌 (2) アルバレスのラテンアメリカ国際法論:第2論争(1908)――第1回汎アメリカ科学会議 (3) 第3論争(1923)――第5回米州諸国国際会議 4 地域的国際学会および地域的機関の決議 (1) 第1回汎アメリカ科学会議(1908) (2) 米州システムの諸会議 (3) 米州国際法に言及したその他の諸文書 5 国家実行におけるラテンアメリカ国際法の概念の承認 (1) ラテンアメリカ国際法をめぐる諸国の見解 (2) ICJ庇護権事件(1950) 6 結論――ラテンアメリカ国際法の理論的基礎とその意義 (1) ラテンアメリカ国際法論争の本質 (2) ラテンアメリカ国際法の理論的基礎 (3) 先行研究の問題点 第Ⅳ章 欧州におけるラテンアメリカ国際法概念の受容 ――欧州国際法の相対化 1 欧州における国際法の地理――文明国間の国際法としての欧州国際法 (1)「欧州国際法」の登場 (2) 欧州国際法と「国際法」 2 非欧州諸国と国際法の適用範囲――文明の基準論 (1) 非欧州の諸国民・諸民族と国際法 (2) アジアと米州への異なる帰結 3 米州における国際法の地理 (1)「欧州国際法」から「欧州と米州の国際法」へ (2) ラテンアメリカからの批判――「欧州と米州の国際法」から「欧州国際法と米州国際法」へ 4 20世紀の欧州における国際法の地理の変容 ――ラテンアメリカ国際法の帰結 (1) 欧州の国際法学の初期の反応 (2) 地域的国際法概念の受容 5 結論――国際法の誕生 (1) 米州の国際法学がもたらした変化 (2) ラテンアメリカ国際法のインパクト 第二部 現代国際法解釈とラテンアメリカ国際法 はじめに 1 ラテンアメリカ国際法と一般国際法 (1) ラテンアメリカ国際法と一般国際法 (2) 第二部の問題意識 2 ラテンアメリカ諸国の一般国際法への特別な寄与 (1) 2つの変化 (2) 具体的な国際法領域・国際法規則 第Ⅴ章 国家責任追及手段の制限 ――カルボ主義およびドラゴ主義 1 問題の所在 (1) 国家責任法とラテンアメリカ (2) 本章の対象と課題 2 カルボ主義の形成 (1) カルボ主義の形成の歴史的背景 (2) 国家実行における内国民待遇ドクトリンの発現 3 カルボ主義とは何か (1) 原典にみるカルボ主義――『国際法の理論と実践』 (2) カルボ主義の根拠と論理 (3) カルボ主義の理論的特徴 4 カルボ主義の解釈論――理解と誤解 (1) カルボ主義と外交的保護 (2) 国家責任発生の実体的要件 (3) カルボ主義と国際的な司法による紛争解決 (4) カルボ主義とカルボ条項 5 ラテンアメリカ諸国によるカルボ条項の実践 (1) カルボ条項の諸類型および実例 (2) カルボ条項と国際法 6 国家責任法の展開とカルボ主義・カルボ条項 (1) 19世紀の国家実行における国内救済完了原則 (2) 混合請求委員会による国際仲裁の主要裁定 (3) 混合請求委員会仲裁裁定におけるカルボ条項の効力・効果の判断 (4) 北米浚渫会社事件裁定 7 国際的な司法による紛争解決の推進とカルボ主義 (1) 汎アメリカ会議 (2) ハーグ平和会議 (3) カルボ条項の変化 (4) カルボ主義・カルボ条項の敗北か 8 残された問題――「内国民待遇ドクトリン」としてのカルボ主義 9 ドラゴ主義とは何か (1) ドラゴ主義とカルボ主義 (2) 原典にみるドラゴ主義 (3) ドラゴ主義の修正――欧州の諸学説との対話 (4)「国家の借財論」による修正 (5) 残された問題――「比較衡量ドクトリン」としてのドラゴ主義 10 国家責任法の展開とドラゴ主義 (1) ドラゴ・ポーター条約 (2) ドラゴ主義の貢献と限界 11 結論 第Ⅵ章 外交的庇護 1 問題の所在 (1) 外交的庇護の史的展開 (2) 本章の対象と課題 2 現代の国際法上の庇護 (1) 庇護の起源と国際法 (2) 国際法上の庇護の定義と諸類型 (3) 違法な行為としての外交的庇護 3 欧州における外交的庇護の史的展開――適法性の否定 (1) 欧州における国家実行と学説の展開 (2) 外交的庇護の「消滅」 (3) スペイン内戦――外交的庇護をめぐるチリ・スペイン対立 4 ラテンアメリカにおける外交的庇護の史的展開――適法性の付与 (1) ラテンアメリカにおける国家実行と学説の展開 (2) 外交的庇護の国際的規律の模索の開始 (3) 地域的諸条約の採択 (4) ラテンアメリカにおける特殊な展開と背景 5 地域的諸条約の規定 (1) 適法な外交的庇護の対象者 (2) 緊急性の要件 (3) 領域国への報告義務および被庇護者の行動制限 (4) 外交的庇護の終了 (5) 外交的庇護の理論的側面に関する諸規定 6 ラテンアメリカ諸国の主要な国家実行および公式見解 (1) 南米諸国 (2) 北中米・カリブ海諸国 7 外交的庇護に関するICJ判決 (1) 1つの事案、2つの判決――庇護権事件判決とアヤ・トーレ事件判決 (2) 庇護権事件の事案および当事者の請求 (3) 庇護権事件判決の判旨 (4) 庇護権事件の反対意見およびICJ規程第63条1項の諸国の見解 (5) 判決と反対意見の分岐点 8 ラテンアメリカの外交的庇護は法的性質を欠くか (1) ICJによる判断と論理 (2) ICJ判決の妥当性の検証 (3) カラカス条約による法的権利義務関係の明文化 9 条約と実行からみるラテンアメリカの外交的庇護 (1) 法的義務としての政治的庇護の尊重 (2) 事実上の尊重との相違 (3) ラテンアメリカの外交的庇護は地域的慣習法か (4) 人道的な法制度としての性質 (5) 未解決または将来的に変化がありうる諸問題 10 在外公館での個人の保護をめぐるグローバルな議論とラテンアメリカの外交的庇護 (1) 他地域には外交的庇護は存在しないのか (2) 一時的避難 (3) 法制度化の是非 (4) 人権条約の領域外適用と外交的庇護 11 結論 (1) ラテンアメリカの外交的庇護の性質 (2) 国際的な個人の保護をめぐるグローバルな展開との関係 第Ⅶ章 ウティ・ポシデティス・ユリス 1 問題の所在 (1) 脱植民地化の領土・国境問題とラテンアメリカ (2) 本章の対象と課題 2 ウティ・ポシデティスの前史と基本概要 (1) 前史――18世紀までの国内法・国際法上のウティ・ポシデティス (2) ラテンアメリカのウティ・ポシデティスの基本概要 3 ウティ・ポシデティス・ユリスの提唱 (1) ウティ・ポシデティス・ユリスの提唱 (2) 各国の憲法にみる領土の認識 4 諸条約におけるウティ・ポシデティス・ユリス (1) 1850年代までの二国間条約 (2) 1860年代以降の二国間条約 (3) ブラジルを一方当事国とする二国間条約 (4) 地域的多国間条約におけるウティ・ポシデティス・ユリス 5 ウティ・ポシデティス・ユリスの法と実際 (1) 諸条約に反映されたウティ・ポシデティス・ユリス (2) 国境画定の実際――共通点と相違点 6 事例検討1:仲裁・裁判でウティ・ポシデティス・ユリス線を特定した諸事例 (1) コロンビア・ベネズエラ国境 (2) コロンビア・コスタリカ国境 (3) ボリビア・ペルー国境(河川流域地帯) (4) エルサルバドル・ホンジュラス国境 (5) グアテマラ・ホンジュラス国境 (6) 小括 7 事例検討2:合意でウティ・ポシデティス・ユリス線を特定した諸事例 (1) ボリビア・ペルー国境(高地地帯) (2) アルゼンチン・チリ国境 (3) 小括 8 事例検討3:ウティ・ポシデティス・ユリス線を特定しなかった諸事例 (1) アルゼンチン・ボリビア国境 (2) エクアドル・ペルー国境 (3) 武力による現状変更が介在したその他の事例 (4) 小括 9 事例検討4:ウティ・ポシデティス・ユリスの不適用 (1) ウルグアイ――国家の成立経緯に起因する不適用 (2) パラグアイ――植民地権力の継承の否定による不同意 (3) マプーチェ独立運動(アラウカニア・パタゴニア王国)――先住民の独立運動 (4) 小括 10 検討結果の総括――ウティ・ポシデティス・ユリスの本質 (1) ウティ・ポシデティス・ユリスの本質と性質 (2) ウティ・ポシデティス・ユリスの構造 (3) ウティ・ポシデティス・ユリスの応用 (4) ウティ・ポシデティス・ユリスの実際の機能と限界 11 結論 (1) ウティ・ポシデティス・ユリスはいかなる原則であったのか (2) 今日の理解と本章の検討結果 結論――多様性の擁護と共通の価値の探求 1 第一部の総括 (1) ラテンアメリカ国際法の存在理由 (2) ラテンアメリカ国際法の理論の構築 (3) 欧州国際法の相対化 (4) 国際法の観念の転換の背景 2 第二部の総括 (1) 国家責任追及手段の制限――カルボ主義およびドラゴ主義 (2) 外交的庇護 (3) ウティ・ポシデティス・ユリス 3 終わりに あとがき 索引 判例・事例 条約・国際文書 事項 人名 国名・地域名
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