著者紹介
シェリー・ピアソル(著者):シェリー・ピアソル
中等学校の教師、オハイオ州の体験型野外歴史博物館の学芸員を経て、現在はオハイオ州の自宅で文筆業に専念。独立戦争時代の難破船調査、バージニア州の野外博物館で18 世紀の遊びの再現、歴史的建造物でのサマーキャンプの監督、五大湖の鉱石運搬船にまつわる伝説の語りなど、歴史にかかわるユニークな仕事をしてきた。処女作である本書『Trouble Don’t Last』で歴史小説に贈られる「スコット・オデール賞」を受賞。作品に『Crooked River』『All Shook Up』『Jump into the Sky』がある。
斎藤倫子(翻訳):斎藤倫子
主な訳書に、『メイおばちゃんの庭』、『シカゴよりこわい町』、『サースキの笛がきこえる』、『ダーウィンと出会った』、『わすれんぼうのねこモグ』、『空飛ぶリスとひねくれ屋のフローラ』などがある。
内容
少年と老人は、無事カナダにたどりつけるのか――最初から最後まで、はらはらしどおしのストーリーで、一気に読んでしまいます。
ハリソンにむりやり連れてこられた少年サミュエル。最初のうちは、おびえているばかりで、足手まといになっていますが、しだいにハリソンの体を案じるまでになり、ハリソンが病に倒れてからは、必死に守ろうとします。
ハリソンも魅力的なキャラクターで、怒りっぽくて、サミュエルがあれこれ尋ねると、「うるさい。寝てろ」などというのですが、奴隷として生まれた自分たちの人生について、自分の過去について、ぽつりぽつりと語ります。ときに皮肉っぽく、ときに感情的に語るハリソンの言葉には、自分たちも人間であるという思いがこもっています。
この作品には、地下鉄道と称される黒人奴隷の逃亡に手を貸した人々に助けられながら命がけで逃げた奴隷の思いが丁寧に描かれています。
さまざまな資料から得た実話を下敷きにしているため、リアリティーがあり、感動的です。
人の命について、人が平等に生きるということについて、深く考えさせられる作品です。