内容
皮膚科で用いられる全身療法薬を解説.全身療法薬は高い効果が期待できる一方,外用薬とは異なり,使用にあたっては代謝状態,腎機能,肝機能,その他の副作用等に注意が必要である.前半では各全身療法薬の基本知識を解説し、後半では、著効例のほかに併存疾患を持つ症例などを題材にエキスパートの処方方法や注意点を解説した.
【序文】
近年、皮膚疾患の全身療法は生物学的製剤や分子標的薬の登場により劇的な進歩を遂げつつあります。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)での新薬審査件数においても皮膚疾患治療薬はトップレベルにあるといわれており、新薬臨床導入のスピードは目まぐるしく、新しい作用機序をもつ薬剤も多いため、臨床医が新薬に対する十分な知識をキャッチアップするのが難しい状況にあります。全身療法では高い治療効果が期待できる一方、安全性への配慮や副作用対策、患者への説明といった十分な患者管理が必要であり、そのためには各種薬剤に対する深い理解が重要となってきます。
そこで本書では、近年臨床導入された、主に全身療法の薬剤について皮膚科臨床医に必要となる要点をまとめ、実臨床に役立つ全身療法の知識をUp toDateするための書籍として企画されました。なお、本書では紙面の関係もあり、あえて皮膚悪性腫瘍に関連する薬剤については割愛しておりますことをご了承いただきたいと思います。
本書は2部構成となっており、「第1部 皮膚疾患全身療法の薬剤をマスターする」では薬剤ごとの項目立てとして、「基本知識(作用機序・適応疾患・剤形・容量)」「投与方法(用法・用量)」「注意点(副作用・禁忌)」「代謝・排泄」「スペシャルポピュレーション(肝機能障害・腎機能障害)への対応」「薬物相互作用」「使用時のポイント」などを解説しています。新規開発中の薬剤については「コラム」にて上記見出し項目に則らず、現状わかる範囲での情報を記載しています。「第2部 疾患別の使い方のコツとピットフォール」では疾患ごとの項目立てとしてケーススタディ形式をとり、各ケースには年齢・性別、家族歴・既往歴、現症・治療歴などの「臨床経過」と「実際の投薬内容」がわかる内容で記載いただき、適宜「本症例のポイント」「本例から学んだこと」「注意すべきピットフォール」「薬剤導入のコツ」「薬剤継続のコツ」「私のコツ」といった見出しの文章も執筆いただいております。また、図表を多用し、ヴィジュアルで読み飽きない紙面構成を心掛けました。
本書が実地医家の先生方の疑問に答え、実臨床にすぐに役立つものとなれば幸いです。なお、「第2部4。単純疱疹・帯状疱疹、B-2Ramsay-Hunt症候群をきたした症例」をご執筆頂いた河内繁雄先生(北アルプス医療センターあずみ病院)が昨年11月にご逝去されました。病を押して亡くなられる前日まで皮膚科部長として患者さんの治療に専念されていたとの由、ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
2020年11月
NTT東日本関東病院皮膚科
五十嵐敦之