内容
児童精神科医としての著者の原点は,精神科で最も重症な患者たちが,ただひたすら赤ちゃんの頃の体験について語るのを目の当たりにしたことにある。「ずっと昔の体験が,長い年月を経ても,たった今の苦しみとして表現される」こと,「過去が過去になっておらず,その限りにおいて現在も未来もないまま」であること。そこから,「精神科の治療は幼い年齢のうちに始めなければ実際上意味がない」との信条が生まれた。本書で著者は,予防医学としての乳幼児精神医学という視点から自らの症例を振り返っている。他にフロイトの「ハンス症例」に関する考察,コロナ下で行われた「児童精神科鼎談」を収録。