著者紹介
ジェニファー・M・ソール(著者):1968年生まれ。カナダのウォータールー大学教授、イギリスのシェフィールド大学哲学科名誉教授、Implicit Bias and Philosophy Research Network所長。専門は言語哲学、フェミニズム哲学、心理学の哲学。2011年Distinguished Woman Philosopher賞を受賞。言語哲学の主要概念でもある「言われていること」の研究から出発し、日常的・政治的発言による人心操作やバイアス、人種差別、性差別の分析に新しい流れを作る。Simple Sentences, Substitution, and Intuitions (Oxford University Press, 2007), Feminism: Issues and Arguments (Oxford University Press, 2003), Implicit Bias and Philosophy (2 Volumes, edited with Michael Brownstein, Oxford University Press, 2016).
小野 純一(編者):自治医科大学医学部哲学研究室講師。専門は哲学・思想史。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)(東京大学)。訳書に井筒俊彦『言語と呪術』(安藤礼二監訳、慶應義塾大学出版会、2018年)がある。
内容
▼隠されたメッセージを暴け!
▼ポスト・トゥルースの時代、巧妙に人を操る言葉を気鋭の言語哲学者がユーモラスに解明する。
▼國分功一郎氏推薦――「ジェニファー・ソールは言葉の政治的効果に名を与えるための新しい理論的道具を我々にもたらしてくれた」
嘘をつくことと、ミスリードして意図的に誤解させることには、倫理的にどんな違いがあるのだろうか。
日常会話から政治における嘘や欺瞞、人種差別の発話まで、多くの事例を読み解き、言葉による印象・感情操作のメカニズムを明らかにする。
海外メディアで話題となった「犬笛」戦術を分析した論文も収録。政治家や差別主義者が、“暗示的に” バイアスや偏見をあおる巧妙な仕組みを詳らかにする。
國分功一郎氏による推薦文全文
――無数の仮定を立てて言葉を論じる言語理論でも、社会情勢を直接に批判するラディカルな政治哲学でもない。統計やジャーナリズムでもなければ、社会的無意識を扱う応用精神分析でもない。ジェニファー・ソールは言葉を唯物論的な次元で捉えつつ、その政治的効果に名を与えるための新しい理論的道具を我々にもたらしてくれた。