著者紹介
オレーク・V・フレヴニューク(著者):1959年生まれ。モスクワ大学歴史学部教授。ロシア連邦国立文書館に長く勤務し、1930年代のソヴィエト・ロシア史およびスターリン研究の第一人者にして、彼の時代の史資料をもっとも閲覧している世界的な権威。邦訳に『スターリンの大テロル:恐怖政治の諸相と抵抗のメカニズム』(富田武訳,岩波書店,1998年)がある。
石井 規衛(翻訳):1948年生まれ。東京大学名誉教授。近現代ロシア史専攻。主要著書:『シリーズ ソ連社会主義 1917-1991(2)ソビエト政治史を読む』(岩波書店[岩波ブックレット]、1992年)『文明としてのソ連――初期現代の終焉』(山川出版社、1995年)。主要訳書:A・ノーヴ『ソ連経済史』(岩波書店、1982年)ロイ・メドヴェージェフ『10月革命』(未來社、1989年)マルク・ラエフ『ロシア史を読む』(名古屋大学出版会、2001年)
内容
真に一新されたスターリン像の提示に挑む!
本書は、ロシアの世界的権威が、スターリンに直接由来する文書館史資料に可能な限り基づきつつ執筆した、最初にして第一級のスターリン伝だ。20世紀を代表する独裁者スターリンの軌跡を辿ることで、それと不可分のソヴィエト・ロシア史および世界史をきちんと把握できる、まさに現代史研究の「基本図書」となるものだ。
解禁された膨大な史資料にあたって、学術的に裏づけしつつ、しかも分かりやすく叙述することで、「独裁者の全貌」が浮かび上がってくる。また叙述の方法にも工夫が凝らされている。章立ての年代記と、スターリンの終末期を背景に彼の人格および支配システムの解読が、交互に記述されている。いわば一種のテキスト上の「マトリョーシカ」(ロシアの入れ子人形)構造になっていて、読者は二通りに読み進むことができる。そのうえ貴重な逸話も数多く盛り込まれており、興味は尽きないだろう。
本書の読者対象は研究者から歴史愛好家、一般まで幅広い。今年はソ連崩壊後30年、権威主義の台頭と民主主義の衰退に危機感を抱く読者にも、大きな示唆となるだろう。巻頭に口絵写真8頁、巻末に「訳者解説」を付す。