丸善のおすすめ度
嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書~自閉症者と小説を読む~
ラルフ・ジェームズ・サヴァリーズ
著
岩坂彰
翻訳
発行年月 |
2021年06月 |
---|
|
|
言語 |
日本語 |
---|
媒体 |
冊子 |
---|
|
|
ページ数/巻数 |
6p,309p,52p |
---|
大きさ |
20cm |
---|
|
ジャンル |
和書/人文科学/文学/イギリス文学 |
---|
|
|
ISBN |
9784622090045 |
---|
|
商品コード |
1033194845 |
---|
NDC分類 |
930.29 |
---|
|
|
本の性格 |
学術書 |
---|
|
新刊案内掲載月 |
2021年07月4週 |
---|
書評掲載誌 |
毎日新聞 2021/07/24 |
---|
商品URL
| https://kw.maruzen.co.jp/ims/itemDetail.html?itmCd=1033194845 |
---|
著者紹介
ラルフ・ジェームズ・サヴァリーズ(著者):研究者、エッセイスト、詩人。グリネル大学教授。講義テーマはアメリカ文学、創作、障害者福祉。ほかの著書に、自閉症の息子DJの半生を振り返ったメモワールReasonable People: A Memoir of Autism and Adoption(Other Press、2007. Independent Publishers Gold Medalを受賞)、詩集When This Is Over: Pandemic Poems(Ice Cube Press, 2020)、ほか。編著に Papa PhD: Essays on Fatherhood by Men in the Academy(Rutgers University Press, 2011)、ほか。2012-2013年、デューク大学脳科学研究所のニューロヒューマニティーズ研究グループに参加し、ニューロダイバーシティ(神経多様性)と自閉症に関する研究調査をおこなった。
岩坂彰(翻訳):京都大学文学部哲学科卒。教科書の編集者を経て翻訳家に。主な訳書に、デイヴィッド・リンデン『40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた』『触れることの科学』『快感回路』(以上、河出書房新社)、ジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』(ダイヤモンド社)、ローレン・スレイター『心は実験できるか』(紀伊國屋書店)、ブライアン・P・クイン『「うつ」と「躁」の教科書』(大野裕監訳、紀伊國屋書店)、クリスティーン・A・パデスキー/デニス・グリーンバーガー『うつと不安の認知療法練習帳』(大野裕監訳、創元社)、カール・ポパー『歴史主義の貧困』(日経BP)、ほか多数。関西大学非常勤講師。
内容
「この卓越した本を読む者は、真に読むということの驚異を感じずにはいられない。……本書は読書についての本だが、私がこれまで出会ったどんな本とも違う。」(S・クーシスト「本書に寄せて」より)
◆文学教授を生業にする著者が、『白鯨』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『心は孤独な狩人』などの名作を6人の自閉症者とともに読んだ読書セッションの記録。自閉症者は「心の理論」を持たない、想像による遊びができないといった偏見は早々に覆されるが、それだけではない。自閉症者がカテゴリー化される以前の「感覚」を通して物語と関わることで、鮮烈な小説体験をしていることが明らかになる。
◆おのおの独特の症状や経歴をもつ彼らの、物語への感受性はときに痛切とも言えるほど鋭敏だ。たとえば『白鯨』を読む第一章では、言葉を話さない自閉症の青年ティトが、どの登場人物よりも鯨に自分を重ねながら小説世界を「泳ぎ」、その感覚を詩に綴りはじめる。『白鯨』のモチーフはやがて、ティトと著者の生活全体を呑み込んでいく。
◆著者は近年の脳科学的知見にもとづいて、「神経多様性(ニューロダイバーシティ)と読書」というテーマをかつてないほど掘り下げている。そこでは、自閉症者と定型発達者、双方の読み方の特性が互いを逆照射し合い、読むという行為の尽きせぬ可能性が浮かび上がる。だからこそ、本書の読後に強く体感されるのは、多様な脳と交感する文学の力の無辺さだ。