内容
“ロジャーズ-ラマヌジャン恒等式に勝る美しい公式は見つけ難いだろう”
―― G. H. ハーディ
ロジャーズが1894年に発見し,それを再発見したラマヌジャンを驚嘆させたロジャーズ-ラマヌジャン恒等式。それは,ある種の無限級数が無限積に等しいという,2つの恒等式である。一見したところ,そこには絶妙な対称性があるものの,その意味するところは捉えがたい。この恒等式をどのように解釈したらよいのだろうか? この恒等式は孤立したものなのだろうか? このような恒等式が自然に生じるような数学的,あるいは物理学的な文脈があるのだろうか? そもそもどうやって証明すればよいのか?
本書では,ロジャーズ-ラマヌジャン恒等式に関するこのような疑問について,整数の分割の理論,超幾何級数の理論あるいは組合せ論の観点から,豊富な具体例を用いつつ丁寧に解説される。さらに,頂点作用素代数,リー代数の表現論,統計力学,結び目理論との自然な結び付きについても言及される。
本書の主要部分は,高度な数学的知識を要さずとも読むことができる。一方で,その意味合いが完全には明らかとなっていないロジャーズ-ラマヌジャン恒等式の研究を,さらに進展させる糸口となる書籍である。
[原著:An Invitation to the Rogers-Ramanujan Identities, CRC Press, 2017]
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■2022年10月号『数学セミナー』(評者:阿部紀行)