内容
一九九二年二月に調印されたマーストリヒト条約は「欧州連合(EU)の市民権がここに創設される」と宣言した。これはEC構成国の市民が、その所属する国家をこえて、ヨーロッパ共同体の一員としての市民権をもつことを意味している。ヨーロッパは、民族紛争や幾多の戦乱の歴史をのりこえて、統一の第一歩を踏み出そうとしているのだ。しかし、ヨーロッパ統合の過程は、さらに遠大な計画であり、近年の表面的な動きの底には、二一世紀に続く豊かな理念をもった設計図が描かれていた。この理念と統合の過程を人々の歴史と共に展望しよう。