内容
社会科学のデータには、調査設計や事象の性質上、情報に制限のあるものが多く、従属変数として使用する際には、注意が必要になる。本書は、こうした打ち切りバイアス,標本選択バイアス,切断バイアスを含むような制限従属変数の分析についての基礎から応用まで、コンパクトでありながら丁寧に解説しており、紙幅の限られた一般的なテキストでは十分に理解できなかった部分を補強することができる。特に、制限従属変数の分析にはトービット・モデルやヘックマンの2段階法などいくつかの方法があるが、初学者はどのような場合にどのモデルを使用すべきか迷いやすい。この点についてもしっかりと指針が示されており、読後には自信をもってこうしたデータの分析にチャレンジすることができるだろう。さらに、こうしたモデルが抱える実際上の問題についても、先行研究での議論を具体的にあげながら解説し、その対処法についても丁寧に述べている。
これらの分析方法を身に付けるためには実践も必要であるが、本文で行われているシミュレーションによるデータを用いた分析を、統計ソフト「R」で体験するための訳者補遺が追加されている。本書を読み進めつつ、時折手を動かすことで、制限従属変数の分析に対する理解がさらに深まる。また、データの発生部分についてもコマンドを紹介しているため、いろいろなデータ状況を発生させて分析への影響を見ることもできる。
[原著: Regression Models: Censored, Sample Selected, or Truncated Data, Sage Publications, Inc., 1996]