内容
自然の過程や
風土を活かした、
国土・地域計画のために
40名の第一線の研究者が、
①基礎理論と手法
②森林、農村、水辺、海辺、都市の景観生態
③地域社会への展開
をわかりやすく解説!
[日本景観生態学会創立30周年記念出版]
景観生態学は、複数の生態系の相互作用系として存在している景観(ランドスケープ)の諸特性を、様々なスケールから空間階層的に解明しようとする学問分野である。「地域を基盤とする生態系・生物多様性の保全管理」の基盤として、国土・地域計画に役立てられる。自然資本としての生態系を活用した地域創生や地域防災、また、ポストコロナ社会での暮らし方の見直しが進むなか、景観生態学の考え方は極めて重要なものとなっている。
本書は、日本景観生態学会中心的メンバー40名によって執筆された景観生態学の教科書である。第Ⅰ部「景観生態学の理論と手法」、第Ⅱ部「代表的な景観(森林、農村、水辺、海辺、都市)の構造と機能」、第Ⅲ部「地域社会への展開」の3部15章で構成されており、景観生態学の基礎、理論から応用、社会実装までの考え方を網羅した一冊である。様々な分野の第一線の研究者や技術者が、最新の知見にもとづいて平易かつ深い内容で解説している。これまでの景観生態学の教科書に比べて、日本の読者の関心の高い内容(里地里山の話など)が盛り込まれ、具体的にイメージしやすい景観を対象としており、初めてこの分野を学ぼうとする方に最適の入門書である。15章はそれぞれが独立したテキストとなっていて、「景観生態学の考え方事典」のように使用でき、興味に応じてどの章から読み進めても構わない。
景観生態学を学ぶ人には必携の書となるだけでなく、生態学や地理学といった基礎学問領域や、造園学、建築学、土木工学などの応用学問領域の学生、研究者、そして、環境計画、地域計画、景観計画、景観デザインなどの実務に携わるコンサルタントや行政、地域で活動するNPOなどの方々にも有用なものとなっている。国土から地域レベルの自然環境保全計画、公園緑地計画などに関わる実務者や、公務員試験(森林、造園、自然環境)対策にも有用である。
景観生態学を学ぶ人は、何かの専門(例えば都市計画学や森林科学、草地学など)をもっていて、自分の対象フィールド(例えば森林)が他の生態系(例えば農地)から受ける影響を考慮することや、それまで対象として地域(の人々)との関係に目を向けるために、景観生態学に足を踏み入れることが多いだろう。この点でも、様々な景観の特徴や地域協働を含めた管理のあり方を包括的に解説する本書の有用性は極めて大きい。